1ドル92円台でヘッジファンドはどう動くか ディーラー歴20年の達人が読む為替

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時間をかけて、為替は1ドル100円へ

ドルを買わなければいけない代表としては、やはり2011年以降、貿易赤字が定着してしまい、こと貿易に関しては、積極的に外貨の買い手にならざるをえなくなっている、日本の輸入勢であろう。たとえば、エネルギーの輸入はコンスタントに外貨を必要とするために、このような買い手が、常にドル円の下値を支えていくだろう。

昨年3月末のドル円は82円台だった。現在のドル円相場は、そこから10円近く上昇している。生命保険会社などドル売りのヘッジをしている投資家が3月末に向けてヘッジの買い戻しを行ってくるのかどうかも、目先は気になる材料だ。

3月末まではまだ時間があるが、現在は売りたい人たちは余裕を持って売れるレベルで、一部はすでに売ってしまっている状況かもしれない。むしろ、買いたい人の需給が押し目で出てくるために、押し目がない状況になっている。

前回も書いたように、為替は、ドル円で95円、ユーロ円で125円へ向かう流れが継続するものと思われる。市場は下落時でも上昇時でもオーバーシュート(行き過ぎ)があることを勘案すると、少し長い時間軸で見ると、ドル円で100円、ユーロ円で130円の可能性も出てきたといってよいだろう。

ただし、その場合でも、オプションなどの影響があるために、利食いの売りをこなしながら時間をかけて上昇していくものと思われる。

田代 岳 国際金融コンサルタント、元為替ディーラー

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たしろ がく / Gaku Tashiro

たしろ がく 米系のシティバンク、英系のスタンダード・チャータード銀行で、20年以上にわたり、為替ディーラーとして活躍。現在は投資情報配信を主業務とする株式会 社ADVANCE代表取締役。ドル、ユーロなどメジャー通貨のみならず、アジア通貨をはじめとするエマージング通貨でのディーリングについても造詣が深 い。また、海外のトレーダー、ファンド関係者との親交も深い。ブログ「YEN蔵のFX投資術」、メルマガ「YEN蔵の市場便り」で個人投資家に対して為替 に関する情報を発信しており、人気を博している。

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