書店「存亡の危機」、また本屋が消えていく 出版不況で生き残る条件とは何か
愛知県名古屋市など中部地方で郊外型店舗を繰り広げる三洋堂HD。同社も売上高が2011年3月期を頂点に右肩下がりが続いている。
同社では文具・雑貨のセレクトショップ「style F」を売り場に導入。雑誌・書籍以外にも、文具や雑貨、玩具、古本など、多様な商材を扱うブックバラエティストアを展開中だ。ほかにも、シニア向けPC教室や児童向け英会話教室といったカルチャーセンターを運営し、本業に次ぐ柱の育成に余念がない。
これから書店はどうすべきか。
先の見えない出版不況であえて雑誌に的を絞り、独自色を発揮する企業も存在する。富士山マガジンサービスだ。主力は雑誌の定期購読を斡旋するビジネス。出版社の割引料金で雑誌を購読でき、利用者が増えている。一般に返本率が約40%の業界で、同社は在庫を原則持たない。
客の属性をとらえて掘り起こす
西野伸一郎社長は「書店で雑誌を3号連続で買った人が1年後にどうなったかを調べたら、約1割しか継続していない。定期購読を自動更新にすれば、やめる人は少なくなる。実際に7割以上の人が継続している」と胸を張る。
定期購読の解約を抑えるため読者が喜びそうな仕組みも用意。育児中の母親が対象の雑誌なら、動物の絵柄がついた弁当容器を開発、購読継続を呼びかける。美術系雑誌なら、人気イラストレーターの絵柄が入ったトートバッグをプレゼント、という具合だ。
こうした販促が可能なのは購読者の趣味嗜好を把握できているから。何をすれば響くか、わかっている顧客であれば、販促策を立てやすい。要はビッグデータの活用だ。雑誌の定期購読者は、ファッションやスポーツ、旅行、自動車などの趣味を持つ消費者でもある。効果的なターゲティング広告も出せる。
リアルかネットか、大小かを問わず、今後はこれまで以上に、売り手側から買い手への仕掛けが増えていくだろう。しかも売るのは雑誌・書籍に限らない。いかにして属性の見える客に向け、最適のタイミングで欲しいものを提供するか。それが可能な書店こそ、消費者から選ばれ、生き残ることができる。
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