陸前高田の復興を後押しするパソナ 地元出身の若者呼び込む就労支援事業

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あまり知られていないが、現在の被災地では深刻な人手不足が起きている。「若い人の多くが仙台や東京などに出て行ってしまったため、陸前高田でも人手を確保できない企業が多く、復興が進まない原因になっている」とパソナ・盛岡の天野英司さん(27)は説明する。

特に中小企業では、ハローワークに求人を出しても、応募者がいないケースが少なくないという。そうした中で、パソナが受託した就労創出支援事業は、やる気のある人材を、地元の中小企業にマッチングさせる貴重な役割を担っている。

現在、同事業では22人が研修生として参加し、地元の11社で働いている。22人の内訳は「男女がおよそ半数ずつで、10~20代前半が約5割、残りが30代以上」(同社)となっている。派遣社員が研修に従事する企業は、再建をめざす市内のホテルや菓子の製造販売、雑貨販売、住宅建設・販売など多くの業種にまたがっている。

正式採用の後は中核的人材に

パソナでは7カ月の雇用期間のうち1カ月をパソコン操作や接遇などの研修に当てた後、6カ月にわたって市内企業での職場実習に派遣している。

きのこのSATO販売は、22人の研修生のうち希望者全員に当たる6人を受け入れている。同社は人材確保がうまくいっているほうだが、「オールラウンドで仕事をこなせる社員が不足しているので、若くてやる気のある安倍君の存在はありがたい。戦力としての見極めがつけば、正社員として採用したい」と社長の佐藤さん(52)は語る。

きのこのSATO販売は、陸前高田では「希望の星」とも言える企業だ。現在の社員数は研修生を含めて約50人。本社やキクラゲの栽培施設を津波で失ったが、運良く残ったしいたけの栽培施設を核に、事業の再建に取り組んでいる。震災後は、大手居酒屋チェーンのワタミや、全国各地からの支援を受けて、「香りたつ三陸森のあわび」と銘打ったしいたけ栽培の大幅な拡大に動き出している。

震災は多くを奪ったが、雇用創出を通じて新たな地域再生の動きが起こり始めた。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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