名古屋人も知らない新幹線「車両基地」に潜入 日本の鉄道のすべてが愛知県にそろう?
列車から降りると、「ようこそ名古屋車両所へ」という横断幕が出迎えてくれる。車両所は検査設備を有しているため、ドクターイエローを床下から眺めて、作業員から下部構造の説明も受けられる。
建物の外には、さまざまな大型の保守用車両が並んでいる。架線作業車はトロリ線の点検や張り替えのために、作業台を最大9メートル上昇させることができる。マルチプルタイタンパーは砕石の突き固めを行い、レールの歪みを是正するマシンだ。迫力のある突き固めの実演に、見学者の間から歓声が上がった。
ドクターイエローの内部見学が終わるころには、日が暮れていた。帰路は新幹線でなく大型バス。車両所の作業員たちが総出で見送ってくれたのが、印象的だった。
「こうした旅行商品を企画するときは、現場の社員を説得するのが大変」と、旅行商品の開発担当者は言う。「でも、現場の人たちは参加者が喜んでいる様子を見て、やってよかったと思ってくれるようです」
ツアーに参加した親子たちの笑顔を目の当たりにした、名古屋車両所の作業員たちも満足したことだろう。きっと自ら次の企画を練っているに違いない。
リニアまでガイドウェイバスまで
名古屋には日本の鉄道のすべてがある――。この言葉は誇張でも何でもない。鉄道の草創期を支えた蒸気機関車から最新技術の粋を集めた列車まで、あらゆる列車が名古屋圏を走っている。
全国の鉄道ファンが注目する名古屋ならではの鉄道として、まず注目したいのは藤が丘~八草間を結ぶ愛知高速鉄道・東部丘陵線「リニモ」である。2005年の愛知万博に合わせてできた中速交通システムで、現在は通勤、通学の足として活躍しているが、この列車の特徴は、磁気浮上式鉄道、つまりリニアモーターカーであるということだ。
リニアといえばJR東海が2027年に営業運転開始を予定しているリニア中央新幹線を、誰もが連想するに違いない。JR東海のリニアは時速500キロメートルで疾走する。一方のリニモの速度は、一般的な通勤列車と変わらない。リニア新幹線と速度の違いがあるとはいえ、浮上走行とはどんなものか一足先に体感できる。
一見、普通の路線バスに見えるが、名古屋ガイドウェイバス「ゆとりーとライン」も名古屋にしかない乗り物だ。専用の高架をガイドレールに沿って走るので、軌道法の適用を受ける。一般道では運転士が運転するが、高架では運転士はハンドルを握らず自動運転となる。
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