だから、それを悪いととらえるのではなく、所与の条件としてとらえているだろう。あるいは、所与の条件が変化して、悪化してきた、ということだ。これはマーケット環境が悪化して、金融政策の効果が表れなくなっているのと、分野は違うが、環境要因としては同じことだととらえているだろう。
もちろん、日銀自身の行動によって、市場環境には影響を与えることができる。変化のきっかけを作ることもできるし、彼らの言う「市場との対話」を通じて、意思を伝えることもできるだろう。
しかし、政治的アリーナではそれはできない。少なくとも、できないと白川総裁は考えているだろう。ここが、財務省出身の日銀総裁と日銀出身の総裁との最大の違いだと思っている人々も、政策のプロの中では多いかもしれないが、実はこれも違う。
日銀は長期でベストな金融政策を目指している
財務省の人々も、政治に対しては基本的に受け身だ。そして、受け身であるべきだと思っている。実は、それが、財務省が力をある程度持ち続けている理由なのだ。政治に働きかけようとすれば、短期で成功したとしても、長期では必ず反動がある。細川政権でそれを学んだというよりは、あのときはそれを忘れていたという方が正確だ。
白川総裁は、政治的環境の変化を、ただ、最適な金融政策の制約条件と考えるだろう。だから、現状の制約条件の中で、日本経済にとってベストの政策を採ろうとするだろう。
日銀は、経済全体のことを考えずに、自分の庭先だけをきれいにしようとしている、インフレが起きなければなんでもいいのか、と批判されるが、それは誤りだ。
彼らは、日本経済全体のことを考え、それを最優先としている。ただ、そのためには、インフレを起こさないようにすることが重要であり、金融政策はそこを最優先させるのが、長期的には経済にとってベストだと考えているだけのことだ。
この考え方が、次の参議院選挙のために短期的に経済を刺激することを最優先とする人々と乖離があるだけのことなのだ。
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