トヨタ「エスティマ」全面改良を急がない理由 発売10年の3代目は熟成でその地位を守る

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安全運転支援システム「Toyota Safety Sense C」

2.4L直列4気筒ガソリンエンジンと、基本設計を共有するエンジンに前後2つのモーターを組み合わせたハイブリッドシステムは以前と同じだ。安全運転支援システム「トヨタセーフティセンス」は、現行プリウスが採用するPタイプではなく、ヴォクシー/ノア/エスクァイアと共通のCタイプとしている。新エンジンや高次元の安全システムの投入は、現状のプラットフォームでは困難だったそうだ。

その代わりシャシーには予想以上に手を入れていることが、シャシー設計担当の子林誠氏の言葉でわかった。

「代々エスティマを乗り継いでいるお客様が多いので、旧型との違いを分かってもらえるように、特別仕様車で採用した経験があるフロントパフォーマンスダンパーを全車に導入し、サスペンションはショックアブソーバーのバルブを新型に切り替えました。こうした設計変更とリアの空力性能向上に合わせてサスペンションのチューニングを行い、ステアリング制御も見直しました」

その効果は短時間乗っただけでも体感できた。なによりもステアリングの反応がカチッとしていて、コーナーが続く道でも安心してペースを上げることができる。パワートレインが不変なのでその方面での新鮮味はないが、古さもまた感じなかった。これならモデルチェンジの必要はないと実感した。

今後のエスティマは

では今後エスティマはどうなるのか。トヨタは4月にカンパニー制を導入し、ミニバンやSUV、商用車はCVカンパニーが担当することになった。試乗会場にはCVカンパニーの中嶋裕樹常務役員も同席しており、次のように説明していた。

「今後はCVカンパニー全体でラインナップを考えていくことになります。エスティマは10年間モデルチェンジなしで作り続けてきたので、日本ではユーザーの高齢化が進み、海外では適合できる市場が少なくなっています。しかし中国などでは背の低い多座席車が人気であり、モデルチェンジを実施してこうした市場に進出すべきかどうか、現在検討しているところです」

中嶋氏は自動運転や燃料電池について、稼働時間が長い商用車への導入は価値があるとも述べており、そのメカニズムがミニバンやSUVに搭載される可能性も否定しなかった。エスティマはプリウス同様、先進イメージで人気を博している車種でもある。次にモデルチェンジが実施された際には、こうした次世代技術を搭載して現れる可能性もありそうだ。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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