ニッポンのタクシーはもっと個性的でもいい トヨタや日産が打ち出す新世代車のカタチ
日本では現在、ほとんどのタクシーが一般のセダンの改造型だ。そこにあって数少ない例外が、ニューヨークシティのイエローキャブとほぼ同型の日産NV200ベースのもの、それとトヨタ・コンフォートだ。後者は地味ながら専用設計ということもあり、機能には際立ったものがある。それは後席の乗り降りのしやすさだ。後席ドアを開けたとき、クォーターピラーの切り欠きがほとんど直角的なので、乗客は頭をぶつける心配が少ない。
コンフォートのよさはタクシー運転手が誰よりよく知っているようだ。コンフォートでないクルマに乗っている法人タクシー会社の運転手が「私もコンフォートを使いたい」とぼやいていたこともある。後席へのアクセスでいきなりベントレーを例に出すのもなんだけれど、高級セダンは後席乗員の顔が隠れるようにシートレイアウトを決めることが多い。高級なクルマは根本的なコンセプトが違うことが多いのだ。
次世代タクシーは、日本の街の風景を変えるか
トヨタ自動車では現在、2017年の発売に向けて「次世代タクシー」を開発中と聞く。「次世代タクシーは、日本の街の風景を変えることを念頭に、“おもてなしの心”を反映した内外装デザインを採用。日本で使用するお客様に向けた安心・快適性能を持たせることで、環境負荷低減、超高齢化などの社会変化に対応」とトヨタ自動車のプレスリリースにはある。
乗降性とか取り回し性については触れられていないけれど、おそらくおろそかにはなっていないだろう。さきに試乗記を書いたが、2016年にフルモデルチェンジしたハッチバックである新型パッソに乗ったとき、後席の乗り降りがたいへん楽だった。見るとコンフォートと同じようなデザインである。高齢者などを載せる機会も多いはずと考えているのだろう。
クルマの世界では、デザインとスタイルとが同義語にとらえられることも多い。けれど、スタイリングがカッコいいクルマを作る仕事だしたら、デザインはこのように乗員の抱えている問題を開発する方便であるといってもいいだろう。少し言葉の含む意味が違うのだ。僕は東京の町を魅力的にしてくれる新世代タクシーの未来に「GO」を送りたい。
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