つまり、合計で約1兆5500億円もの巨額損失を抱えることになります。これらを売却するにしても、政府が原発を全廃すると決めたら、原子力発電所を売ることはできませんし、核燃料も二束三文でしょう。いずれにしても、巨額の減損処理が必要なのです。
そして、このことは東電に限った話ではありません。日本の電力会社のほとんどが同じような問題を抱えているのです。電力会社が原発を廃止したくない理由の一つが、ここにあることは明らかです。減損額があまりにも膨大であるため、電力会社としては何とか原発を再稼働させたいと思っているのです。
原発は廃止に向かうべき
しかしながら、私は、やはり原発は全廃すべきだと考えています。ただし、今すぐに全廃することは非現実的だと考えています。5年ないしは10年程度の猶予を設け、安全性の高いものを10基程度動かしながら徐々に全廃し、その間に代替エネルギーに変えていくというのが現実的なのではないかと思います。
もちろん、原発推進派の人たちにも言い分があるでしょう。それについても、それぞれ対処の仕方が考えられます。
まず、先程も触れました、約1兆5000億円もの減損処理を避けたいがために、原発を止めたくないという点ですが、これに関しては、この減損分を国が手当すれば済む話ではないでしょうか。減損処理に合わせて、10年以内であれば年間1500億円ずつ東電に資金注入すればいいのです。もちろん、他の電力会社に対しても同じ対応をすればいいと思います。
この方法は、東電にとっても大きなメリットがあります。原発は、すべて購入済の資産であるわけですから、この減損額はすでに出ていってしまったお金です。つまり、これは正確には評価損だということです。これを政府が現金で補助すれば、東電から見れば現金収入が増える上に評価損も消えるわけですから、一石二鳥となります。
次に、原発再稼働を強力に後押ししている人たちの本音を考えてみます。原発再稼働を進めたい人は、大まかに二種類に分けられます。一つは、自分たちの生活基盤を守るために、利益を確保したいと考えている電力会社の社員たちや原発で働いている人たち。もう一つは、原発の技術者など、原発産業で収入を得ている人たちです。
前者の人たちは、自分たちの生活が安定すればいいわけですから、今ここで述べたように、損失分を政府が補償してあげればいいのではないでしょうか。原発で働いている人たちも同様です。原発がないと地域の雇用が失われると言う人たちにも、政府が補償するべきでしょう。ただし、その資金を再生可能エネルギーの開発や普及に使うことを条件とするのです。これで、雇用対策とエネルギー対策を同時に進めることが可能となります。
ただ、後者の原発産業の人たちに関しては、今までやってきた仕事の内容を変わってもらうしかありません。その人たちの存在価値を守るために、約1億2000万人の日本国民がなぜリスクを負わなければならないのでしょうか。優秀な技術者も多いでしょうから、他の分野でも活躍できる人も少なくないはずです。どうしても核や原発の開発を行いたいなら、海外で活路を見出すしかありません。
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