賃金を上げるには成長戦略が必要 米国のインフレ率2%の理由は生活コスト上昇

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元BIS(国際決済銀行)のチーフ・エコノミストだったウイリアム・ホワイトは、昨夏に発表した論文で、「超金融緩和策はフリーランチ(ただ飯)ではない」と強い口調で警告を発した。超緩和策の景気や資産価格に与える効果は言われているほど強くなく、他方、モラルハザードの発生を含めたさまざまなコストが発生する可能性が高い。

ホワイトは、03~04年頃にFRBの金融緩和姿勢は危険だと警笛を鳴らしていたが、当時FRB理事だったバーナンキは、それは筋違いだと激しい反発を見せた。その後、サブプライムバブルの破裂とともに、ホワイトの見解が正しかったことが明らかになる。このため、彼の現在の警告にも耳を傾ける必要があるだろう。

市場の期待が過剰になると、反動のおそれも

一方、今の日本では「FRBの政策を見習え」というムードが非常に強い。日銀は安倍政権が要求する政策を基本的には受け入れていくと思われる。

昨年11月後半から現在にかけて、ドル円相場は大幅な円安になり、日経平均は1万円台を大きく上回った。同10月に東京で開かれたIMF・世界銀行総会で世界中から集まってきた海外の機関投資家は、日本の貿易赤字、高齢化問題などを改めて認識し、「いつまでも円高トレンドではないな」という思いを抱くようになりつつあった。

また、リーマンショック以降、外貨建て運用を控えていた日本の個人投資家も、最近はそれに再び関心を高めているため、それも円安要因の1つとなっている。

そういった潮目の変化の時期に、安倍発言がタイミングよく出てきた。海外の大手ヘッジファンドは、相場の流れを形成する「ストーリー」を好む。最近はユーロを攻撃する「ストーリー」が描けなくなっている。世界を見渡してわかりやすい「ストーリー」といえば、「安倍トレード」ぐらいになっている。このため、多くのファンドマネジャーが「安倍トレード」に参戦してきている。

ただし、彼らの中には、日本経済の実情、デフレ脱却の難しさを知らない人も多い。市場の期待が過剰になると、反動のおそれが出てくるため、注意が必要である。

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