「正職員の6割強」がJAつやまを訴えた意味 立場の弱い労働者は権利をどう行使できるか
JA(農業協同組合)。農業にかかわる人たちを中心として全国各地にある組織だ。農業に必要な資材の共同購入や農業技術の指導、農畜産物の直売のほか、銀行のような貯金や融資、保険に似た仕組みの共済なども手掛けている。その一つ、岡山県津山市の津山農業協同組合(JAつやま)を舞台に、前代未聞ともいえる事態が起こっている。
正職員の3分の2、つまり6割強に当たる約220人が不払い残業代の支払いを求めて、JAつやまを岡山地裁に訴えている。原告はいずれも津山農協労働組合の組合員。訴状や各種報道などによると、原告はJAつやまとの団体交渉を重ねたうえで、訴訟に踏み切ったという。JAつやま側はこれに対して争う姿勢を見せている。
農協は一般企業とは形態の違う組織ながら、職員は会社員と同じように労働基準法をはじめとする労働法規にのっとって、使用者に対して一定の権利を行使できる。今回の訴訟に至るまでの動きを見ると、その模範的な流れとなっている。
ポイントは3つある。
早期に弁護士等の専門家に相談
まず、原告の労働者側が早期に専門家へ相談を持ちかけたことが挙げられる。津山農協労働組合は、昨年春ごろから弁護士に相談を始め、時間をかけて証拠集めなど訴訟に向けた準備を進めてきたようだ。
残業代の不払いや不当解雇など、労使間のトラブルが起きた場合、労働者側と使用者側の情報量や力の差はもともと大きい。労働者本人だけで効果的に権利を主張していくことが難しいものの、早期に弁護士等の専門家に相談することで「法的に正しい解釈」と「具体的な権利の実現方法」を知ることができる。
訴状や各種報道によると、今回の訴訟の争点の1つは、JAつやまが一部の職員について、労働基準法で残業代支払いの対象から外れる「管理監督者」へ一方的に変更したという点だ。
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