瀬古チーム、駅伝参入は苦渋の決断か DeNAがヱスビー食品陸上部を受け入れ
一方、駅伝の解説に必ず登場する瀬古氏だが、ヱスビー食品陸上部の指揮官としては駅伝から距離を置いていた。「五輪(オリンピック)や世界選手権のトラックレースやマラソン(42.195km)で世界と戦う選手を育成することに集中するためだった」と、瀬古氏をよく知る陸上競技関係者は明かす。
かつて日本のお家芸と呼ばれた男子マラソンだが、近年の世界大会では、海外勢に歯が立たないでいた。この遠因が、複数区間をたすきでつなぐレースである、駅伝にあると批判されることがある。
“非”実業団ランナーがマラソンで台頭
駅伝への強い取り組みはマラソン選手を強くするという観点からみると有効ではない。
駅伝は最も長い区間でも1人20km前後。スピードを重視するなど、42.195kmを走るマラソンとは練習の質が違う。マラソンの体をつくるのには一流選手でも3カ月かかるとも言われ、駅伝を重視すればするほど、マラソンに集中した練習をするのが難しくなる。
全国大会だけでなく、地区予選会も気が抜けない。強豪チームになると1人年間2000万円かかるともいわれる強化費を捻出している関係から、「サポーターである自社従業員の支持を得るためにも、駅伝で好成績を残さなければならないというプレッシャーが強い」とある選手は打ち明ける。
ロンドン五輪の男子マラソン代表に選ばれた藤原新選手や、代表候補に上った市民ランナーの星、川内優輝選手が、駅伝を重視する実業団には属さないスタイルで、マラソンで頭角を表したのは、こうした流れを象徴している。