極右が嫌う移民こそが、オーストリアを救う

経済停滞と政情不安招いた元凶は人材不足だ

オーストリア企業の子会社がもたらした研究開発の成果で、東欧諸国は急速な経済成長を遂げた。現在、オーストリア企業の多くの子会社が立地するブラチスラヴァ、プラハ、ワルシャワといった都市の住民1人当たりの収入は、ウィーンよりも高い。ある調査によれば、08年にこの3都市は、購買力平価でウィーンを上回ったという。何世紀もの間、これらの都市がウィーンを基準にしていたことから考えれば、目覚ましい発展といえる。

一方、皮肉なことに、専門性の高い製造業が外国へ流出したオーストリアの経済成長は減速した。

ドイツとの違い

ドイツ経済にオーストリアのような傾向は見られない。これには3つの要因がある。まず共産主義の衰退後、オーストリアは対外直接投資先をほぼ東欧に絞ったが、ドイツの対外直接投資で、東欧に移ったのは一部にすぎなかったことだ。

2つ目の要因は、ドイツは専門知識を有する人材を多く抱えていたことだ。98年時点で、ドイツ国民の学位取得者の割合は15%と、オーストリアの倍以上だった。

3つ目の要因は、東欧に進出した多くのオーストリア企業が外国企業の子会社だったのに対し、ドイツ企業の多くは、ドイツ人が主体の多国籍企業だったことだ。オーストリア企業は東欧の環境に事業を適応させ、現地人を要職に就かせた。一方、ドイツ企業は中欧、東欧の子会社に自社の企業文化を移植し、ドイツ人を多く要職に就かせた。その結果、自国の成長につながったのだ。

オーストリアがかつての成長を取り戻すには、まず企業が優れた人材を確保しなければならない。その育成には時間がかかるが、移民という選択肢もある。オーストリア国民は、極右政党が非難した移民政策こそが、経済復活の希望となりうることを認識すべきであろう。

週刊東洋経済7月2日号

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