錦織圭「ナイス、卑怯!」で育てられた戦略脳 つねに裏をかく「if then思考」の凄み

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たとえば、予期しないことが起こると、ほとんどの人は頭が真っ白になって動揺する。動揺している間に試合が終わっていた、ビジネスマンなら商談や会議が終わっていた、となる。

「逆に、相手が仕掛けてくる攻撃のパターンをいくつか想定し、その解決法を準備しておく。もしくはそういったピンチになったら、心を整えるパターンを作っておくこと。そのことは、テニスなど長時間同じ相手と向き合うスポーツでの修正力につながります」(篠原さん)

もし、このゲームを失っても、次のゲームを取れば立て直せる。

もし、ピンチになったら、深呼吸を3回する。

もし、ネットに夢中になったら、5分間だけと決めて仕事に戻る。

錦織は「修正力に長けている」

錦織はよく「修正力に長けている」と言われる。ひとつのセットを失っても、次セットではそれまでと異なる戦略戦術をもって試合の流れを引き戻す。本来は、この「if then思考力」に長けているはずだ。

そのことについては、錦織圭を5~13歳までの8年間指導した柏井正樹コーチ(松江市グリーンテニススクール)が、錦織選手との歩みとともに、その独特の指導哲学を著した『戦略脳を育てる―テニス・グランドスラムへの翼』にも、紹介されている。

柏井コーチは「テニスコートはある意味、戦場です」と言う。たとえば練習で子供と打ち合うとき、彼は「フォア(右)に行くよ」と一声かけてから打つ。すると、子どもたちは(フォアにくるんだ)と思い込み、フォアですぐ打ち返せる構えをつくる。

ところが、柏井コーチはそこでドロップショット(ネット際にストンと落ちるボール)を打つのだ。選手は「はあっ?!」と驚くが、彼は当然のような顔をして告げる。

「(ボールはコート内に)入ってるやん。フォアって言って、フォアに打つやつは馬鹿でしょ。コートは戦場だよ」

このように「フォアに行くよ」などと教えたとおりのことはしない。ただ「この子は言ったとおりにはしてこない」と構えている姿を見たら、たまにそのとおりに打つ。裏の裏をかくのだ。

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