アサヒビール、ブランド戦略に新境地 ドライの成功なぞり「クリアアサヒ」初の派生商品
アサヒがクリアアサヒの派生商品を投入した背景には、先行事例がある。昨年、発売25年を迎えたスーパードライで初めて投入したエクステンション商品「アサヒスーパードライ -ドライブラック-」が成功を収めたことだ。ドライブラックは約300万ケースを販売しただけでなく、既存のスーパードライの市場をほぼ侵食しなかった。
加えて、新ジャンルでは新商品ブランドの濫立がかえって商品イメージの希薄化を招き、販売が苦戦するという事態も起きていた。昨年、アサヒは新ジャンルの販売数量を前年から5.3%落とした。同日、会見した小路明善社長によれば、「(前の年の新商品として投入した)『一番麦』や『ブルーラベル』の落ち込みを(新ブランドの)『ダイレクトショット』で賄いきれなかった」のが主な要因だという。
派生戦略の奏功でビールは落ち込まず
というのも、年後半の天候要因が悪いという事情があったにもかかわらず、ドライブラックの投入や、飲食店などで氷点下の温度で提供する『アサヒスーパードライ エクストラコールド』の拡販といった「エクステンション戦略が奏功してビールでみるとほぼ前年並みの販売を保った」(小路社長)。
出遅れていたノンアルコールビールでも、スーパードライのブランドイメージを最大限に活かした「ドライゼロ」がヒット。当初目標を大きく上回る販売とシェアを獲得した。これもスーパードライのエクステンション戦略だと言える。
つまり、強いブランドの派生商品で新たな需要を開拓できたという事例を、新ジャンルの定番ブランドに育ったクリアアサヒでも水平展開しようというのが、アサヒビールの狙いだといえる。小路社長が同日の事業説明会で語った言葉を借りれば、「ブランド資産の最大化を求めていくローリスクハイリターン経営」ということであろう。