キリンブランドで世界制覇するつもりはない キリンホールディングス社長 三宅占二
中期経営計画に掲げる2012年度の数値は売上高、営業利益ともに未達。昨年は、ブラジルのビール会社買収で財務内容も悪化した。柱の国内ビールは2年連続でアサヒビールにシェア首位の座を奪われている。そんな中、キリンホールディングスは4月に主要事業会社のトップ刷新という異例の人事を敢行、新たに船出した。勝算はあるのか。三宅占二社長に話を聞いた。
──社長に就任して3年目。当初、思い描いていた構想と比べて、現状をどう認識していますか。
大きなアウトラインや会社の方向性は、前社長の加藤壹康氏(現相談役)が06年につくっていた長期経営計画の「KV2015」だ。その枠組みがあったから産みの苦しみを味わわずに済んだ。しかし、社長というのは、なかなか落ち着いてやれるものではないと実感している。国内外の市場環境の変化は激しい。どう事業をアジャストするのかという難しさもある。社長3年目でも「慣れました」とはとても言えない。
──足下の業績への評価は。
業界全体の傾向だが、国内は当初の予想より、かなり厳しくなっている。各社とも昨年は東日本大震災で販促活動を控えたため、今期は昨年できなかった分の販促プロモーションもやり直さなくてはいけない。特に、昨年発売できなかった新商品も今年はしっかり根付かせるために、販促費をかけた。しかし、問題は費用に比べて期待したほどお客様に商品を買っていただけていないことだ。トップラインが伴っていない。
今後は、今年前半に実施した「一番搾り」の強化や、「のどごし〈生〉」のリニューアルといった先行投資分が、下期に効いてくることを期待したい。実際、8月からの主力ブランドは好調だ。計画の下方修正はすでに出している。その数値に到達できるように努力していきたい。
--4月にキリンビール、キリンビバレッジなど主要事業会社のトップを一新した人事には驚きました。あらためて、その狙いは。
思った以上に皆さんが驚かれたことに、こちらが逆に驚いた。何度も言うように、キリンビール、キリンビバレッジの前社長、松沢幸一氏と前田仁氏のパフォーマンスに不満があったということはいっさいないし、二人の功績は大きい。