日本製紙、「脱・紙」で踏み切る米国事業買収

300億円を投じる紙容器の皮算用とは?

今年3月には、世界有数の液体食品向け紙容器サプライヤーである、ノルウェーのエロパック社とライセンス契約を結び、新しいデザイン形状と新機能を持つチルド用液体紙容器を日本市場に導入。さらに4月には、企画本部内に「パッケージング・コミュニケーションセンター」、研究開発本部内に「パッケージング研究所」を新設するなど、パッケージング事業拡大に向けた体制強化を加速させている。

そうした日本製紙のパッケージング事業にとって、実はウェアーハウザーは長年の主要な原紙調達先の一つ。「他の原紙メーカーを締め出したりすることはないが、今後はウェアーハウザーの紙容器原紙をメインで使っていきたい」(日本製紙の海外事業部)という。今回の買収によって、日本製紙はグループ内で紙容器の原紙生産から容器加工まで行える、一貫体制を整えることになる。

日本製紙がウェアーハウザーから買収する、紙容器向け原紙事業の収益規模は、2015年12月期で、売上高が3億6200万ドル(約380億円)、営業利益が900万ドル(9億円強)。日本製紙本体の2016年3月期の連結売上高1兆0070億円、営業利益226億円と比べれば、買収効果は限定的ともいえる。しかも、今回の買収では、のれん代(買収金額と純資産の差額)が2015年12月末時点の帳簿価格ベースで90億円前後に上るため、今後は当面、同事業の営業利益を圧迫する可能性もある。

主力の洋紙・板紙は国内伸び悩む

とはいえ、主力の洋紙・板紙という「紙」事業が今後も国内市場で伸び悩むと想定される中、紙容器を軸とするパッケージング事業は、日本製紙にとって、エネルギー(バイオマス発電など)、家庭紙・ヘルスケア(紙おむつなど)、ケミカル(セルロースナノファイバーなど)と並ぶ、「脱・紙」の柱であることは間違いない。今回の買収先は米国に拠点があることから、ライバルの王子ホールディングスに比べても半分程度に過ぎない海外売上高比率(王子28%に対し、日本製紙14%)を、引き上げる意味合いもある。

また日本製紙は第5次中期計画で、2018年3月期の連結売上高目標を1兆1100億円に置いているが、足元の2017年3月期の段階で、すでに1000億円近くの未達が想定されている。前出の四国コカ・コーラ売却に伴う減収の影響(年商規模450億~500億円前後)も大きい。それが、今回のウェアーハウザーからの事業買収によって、年商400億円規模がひとまず埋まることになる。

一方、営業利益面での買収効果は、のれん代の発生もあり、売上高に比べれば、当面は限定的となりそう。ただし、ウェアーハウザーの紙容器向け原紙事業が現在、日本・韓国・北米で8~9割を占めているのに対して、日本製紙では、「今後はアジア市場、特にASEAN(東南アジア諸国連合)向けに拡販していきたい」(海外事業部)と意気込む。

原紙生産から容器加工までグループ内に取り込むことによる一貫化、すでに既存事業で足場を築いているASEANでの拡販によって、どこまでスピード感を持ち、買収の相乗効果を出すことができるか。5年ぶりの大型M&A投資の成否は、ひとえにその点にかかっている。 

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