ネットでの評判が気になる人、ならない人 結局、みんなが知りたいのは他人の年収だ

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中川:そんなことがあるんですか?

速水:うん。で、低評価がついて平均点が下がったりすると、本で食っている人間としては「イタタタタ」となるわけ。これがネット社会の恐ろしさというか、評価経済の怖さだと思うんです。むこうはアカウント名くらいしか出していないからネットで揉めたりしても実生活には何も影響がないけど、こちらは実名で発言していて、ネット上でのやり取りが自分の商売にも関わってきたりする。妙な評判を流されたり、嫌がらせでアマゾンに低評価を付けられたり。そういう恐怖ってないの?

取引先の人たちに理解してもらえているからオレは困らない(中川氏)

中川:ないですね。理由は、オレの仕事の9割はB to Bビジネスだから。ほとんどが自分の名前が出ない裏方仕事なんですよ。オレの取引先の人たちはそれなりに信用してくれているし、ネットで多少炎上したとしても「中川さん、見ましたよ~。燃えてましたねぇ」なんて笑い飛ばしてくれる人か、まったく意に介さない人ばかり。彼らに理解してもらえているから、オレはまったく困らないんです。そもそもオレはスマホも持っていないし、外でネットを見ることもないから、SNSで何を言われていようがいちいち感情をざわめかせることもない。

速水:その点、僕は完全にB to Cなんですよね。SNSで中川さんの10分の1もヒドイことを言っていないと思うけど(笑)、それなりに気の小さい人間なので、わりとネットでの評価を気にしながら生きてます。

中川:そんなの気にしなくて大丈夫ですよ。オレは速水さんのこと大好きだし、今こうやって話しているのがとても楽しい。それでいいじゃないですか。

「引っ越しのコスト」は「コミュニケーションのコスト」

中川:ところで、速水さんの『東京どこに住む』を読んでつくづく感じたんですけど、これは速水さんじゃないと書けない本だなと。

速水:え、どうして?

中川:『「中央線がなんか苦手」という意識』というパートで出てきた“中央線中華思想”とか、「あるある!」みたいな話がたくさん散りばめられていて、すごく面白く読んだんですけど、そういうのって、速水さんが地方(石川県)出身だからこその視点だと思うんですよね。少なくとも、
中央線沿線の西のはて・立川出身で、大学も国立(くにたち)だったオレには絶対に書けない。

「中央線カルチャー」とか言われても、「『中央線カルチャー』といっても吉祥寺から中野までの話でしかないですよね? オレにとっては相模湖から武蔵境なんですよ」としか思えない。さらには立川や国立をないがしろにしている感じがして冷静な議論ができない。しかし、「中央線カルチャー」といえば、やはり世間的には吉祥寺から中野であり、一般論として議論するにはそういった点を押さえなくてはいけない。

さらには、東側や山手線の内側にも観測範囲を広げなくてはいけないけど、自分にとってはそこに興味がいかないんですよ。東京タワーに初めて登ったのも取材で行った2004年だし…。だからこそ別の場所から来た速水さんならではの疑問や興味がよく本書には現れている。

速水:どうだろう……。自分の視点というか、たくさんヒアリングしてよく出てきた話をまとめた集合意識みたいなものなんだけど。東京出身の人のほうが、細かい地域ごとの住民意識にうるさいケースのほうが多いですけど。僕自身は大学進学を機に上京してきたんだけど、下北沢とか目黒とか、ずっと東京の新宿渋谷を起点とした西側の郊外線沿線で暮らしてきたんですよ。東京にあこがれて上京してきた地方出身者にとって、“東京に住む”というのは“新宿駅か渋谷駅につながる沿線に住む”ということになる。それが基本ルール。中央線なのか西武線なのか小田急線なのか東急線なのか京王線なのかくらいが選択肢だった。

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