中国レノボのスマホは、日本で成功できるか 徹底した"脱中国"ブランド戦略を推進

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アシュトン・カッチャー氏もイベントに登場

そのために、映画『スティーブ・ジョブズ』でジョブズ役を演じたアシュトン・カッチャー氏と契約し(関連記事)、公式なレノボの製品アドバイザーとして参画させるなどの仕掛けを積極的に進めている。

これも、米国市場での存在感を高め、安価な中国メーカーではなく、「あのThinkPad」や「あのMoto」を商品力落とすことなく作っているカッコいいメーカーと見せたいのだ。

だからこそサンフランシスコで開催することが重要であり、各ブランドの機器が生まれる組織を大きくは変えない。とりわけ、このイベントで発表されたMoto ZおよびMoto Z Froceは、アップルやサムスンとは異なる方向の付加価値を生み出せるメーカーであることを示すうえで重要だったのだ。

一方、日本市場に目を向けると、サーバ部門とパソコン部門が強さを発揮しているものの、たとえばパソコン部門はThinkPad一辺倒で、「レノボ」ブランドのパソコンは定着しているとは言い難い。また、スマートフォンが提供されていないため、そもそも楊CEOが言うコネクティビティに根差した商品戦略は完結しない。楊CEOは本誌インタビューの中で昨期中に日本でもスマートフォンを発売すると明言しながら、まだ登場していないという事実もある。

日本市場におけるレノボは、グローバルと比べたときにかなり特殊な立ち位置にあるわけだ。しかし、スマートフォンが発売されないことには、楊CEOの描くビジョンは達成できない。とはいえ、CEOの発言が「ウソだった」ということもないだろう。おそらく近い将来、彼らは昨年から継続して交渉している端末で、近く日本市場参入を果たすのではないだろうか。

「Moto Z」はSIMフリー版販売を検討

また、日本市場投入が検討されているMoto Zに関しては、どうやら輸入代理店がついて、レノボとは別経路でのSIMフリー版販売が検討されているようだ。商品力は極めて高いだけに、いずれ存在感を出してくればキャリア扱いのメーカーとして旧モトローラのMotoが復活を果たす可能性も出てくるだろう。

iPhoneはいまだに強い商品力と存在感を誇っているが、ブランドの面ではピークアウトしつつある。一方、サムスン電子のGalaxyやソニーのXperiaといったブランドは、プラットフォームを持たない(グーグルが保有している)ことを考えれば、同じプラットフォームの他メーカーにいつでもその座を奪われる不安定さがある。

レノボがその特殊な立ち位置を上手に使いこなせれば、日本市場でMotoやレノボ、あるいは日本市場限定でThinkPadブランドやNECブランドのスマートフォンがキャリアから発売される時代がやって来る……なんて話も、決して絵空事ではなくなるかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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