中国レノボのスマホは、日本で成功できるか 徹底した"脱中国"ブランド戦略を推進

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レノボはIBMから取得したPCおよびPCサーバー部門に関して、可能なかぎり元からある企業文化を残そうと努力してきた。たとえばThinkPadに関しては、いまだに元日本IBM大和研究所の組織が企画・設計・開発にかかわっている。

これは元モトローラの端末部門モトローラ・モビリティをグーグルから引き継いだ「Moto」ブランドも同じである。レノボには複数のスマートフォンブランドがあるが、自社で展開してきたそれらのブランド(グーグルと共同開発したTangoデバイスのPhab 2 Proもレノボ発のブランド)とは別の独立した組織として運営されている。

これには理由がある。

レノボグループ全体としては、日本のNECなども含めて重なる事業領域の多い非効率な組織に見えるが、これを彼らは一向に改善しようとしないのだ。ブランドの統廃合と、それに伴う組織の効率化を進めると、人的資源の流出が急速に進み、商品力が落ちると知っているからである。

中国初の大手パソコンメーカー「レジェンド」として始まったレノボだが、その歴史を振り返ると買収後の組織が商品力を落とさないことをもっとも重視している。組織の効率化や、ブランド投資の効率化、開発・生産体制の効率化は、やり過ぎると本来買収先が持っていた商品力を落とし、売り上げを失ってしまうことにもなる。

多くの独自ブランドを展開しながら、しかし、ThinkPad、NEC LAVIE、Motoといったブランドや組織、人的リソースも残す。ハードウエアメーカーとしてのレノボの生き残りのレシピが、スマートフォン市場が成熟期にある中にあっては強みになろうとしている。

中国資本ならではの低コスト生産

レノボのスマートフォン事業は、足元だけをみると楽観できない状況だ。彼らの強みのひとつは、中国市場で数多くの端末を販売することで調達力を上げ、また中国資本ならではの低コストな生産体制で、高付加価値のブランド端末の収益性を上げられることだ。

たとえば、NECのパソコンは単独では生き残れなかっただろう。しかし、レノボの調達力で新しい部品や技術の提案を低コストで受けることができ、また、マイクロソフトやインテルなどのプラットフォーマーとの協業や情報入手も最優先で受けられる。いずれもNEC単独では望めなかった。中国企業でありながら、日本や米国にある魅力ある開発拠点、ブランドを持ち、中国企業の強みを活かしながらも、高い商品力をもたせることができる。レノボおよびMotoブランドのスマートフォンでも同じシナジーが得られる見込みは充分にある。

ところが中国市場でのiPhone売り上げが、iPhone6の世代から急伸。さらにシャオミをはじめとする新興メーカーの台頭もある。中国メーカーとしてはブランド力が認められるレノボだが、アップルほどの高級路線は押し通せない。上と下に挟まれて、中国市場での戦いは厳しさを増している。

そんな中でレノボが目指しているが、コンシューマブランドとして米国市場をはじめ、グローバルでレノボブランドを定着させることだ。

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