韓国・新大統領は「親日」か「反日」か

朴槿恵新政権とのつきあい方

新政権が負う対日リスクを日本は理解すべき

慶應義塾大学法学部・西野純也准教授

――今回の選挙で、何が朴槿恵候補の当選を後押ししましたか。

民主統合党候補の文在寅陣営は、途中で出馬を辞退した有力候補・安哲秀氏と「反与党」「政権交代」という名の下に候補を一本化できれば朴槿恵候補に勝てるとの認識にとらわれ、一本化に依存しすぎた。

そのため、自力で勝ち抜く選挙戦略がなく、最後まで安哲秀氏へ依存する形となった点が、最終盤の追い上げにもかかわず勝利に手が届かなかった最大の要因ではないか。

一方、朴槿恵候補は、前回の選挙における当時のハンナラ党(現セヌリ党)での候補予備選で敗北して以来、5年間にわたり今回の大統領選挙に向けて準備してきた。

福祉政策や経済民主化など、本来は民主統合党など進歩陣営が得意とするイシューをいち早く公約に取り入れることができた。最終的に、朴槿恵VS.文在寅、すなわち保守対進歩(革新)の両者対決となり、保守派支持層の結集をもたらしたことが当選につながったと見る。

――次期大統領となる朴槿恵氏の政治手腕などをどう評価しますか。

04年、12年の総選挙など、選挙における政治的手腕は評価できる。04年は当時の盧武鉉大統領を、当時の野党ハンナラ党が弾劾したことに対し国民の多くが反発。ハンナラ党が選挙でどこまで負けるかが焦点となった選挙だった。

にもかかわらず、当時党代表だった朴槿恵氏が陣頭指揮をとり、惨敗を食い止めた。12年総選挙も与党不利と言われていたが、朴氏の指揮で過半数勝利を収めた。以来、選挙のたびに苦境をはね返すリーダーシップを発揮し、「選挙の女王」と呼ばれている。この点を考えると、政治家としての手腕は検証済みだと考える。

ただ、政治家として15年のキャリアはあるものの、知事などの行政経験がなく、この点で、国家運営、行政に対する手腕は未知数だ。彼女は、母の死後、父である故・朴正煕大統領のファーストレディ役を5年にわたり務め、当時から父の職務遂行を見ていた。したがって、この経験が、朴槿恵氏が国政運営を行う際の参照基準の1つとなるだろう。

また、原則や約束、信頼を重視するという肯定的評価がある一方で、柔軟性に欠け、国民との意思疎通が十分でないとのマイナス・イメージがある。「不通」(意思疎通が十分でない)というレッテルまで貼られることがあるが、このイメージをどう払拭できるかが課題となるだろう。

――新政権はどのような政権になると考えられますか。

「グローバル・コリア」を唱えた李明博政権と異なり、朴槿恵政権には「内治」が重要な課題となる。今回の選挙で表面化した理念や世代の対立をはじめとする「両極化」問題に取り組み、選挙キャンペーンで掲げた「100%大韓民国」(国民大統合)を実現するのは容易ではないだろう。

低調な経済成長率という状況のなかで、福祉の拡充と経済民主化という選挙公約に取り組まなければならないということ自体、朴槿恵政権の前途が厳しいことを予想させる。

――日本との関係はどうなりそうですか。

朴槿恵氏は悪化した日本との関係を改善したいと考えているはずだ。日本に対する理解も深い。しかし、韓国社会では、日本との関係が深く、時に「親日派」とされる朴正熙・元大統領の長女であるがゆえに、対日関係では韓国民の厳しい目を常に意識せざるをえない。日本側は、朴氏にかぎらず、韓国の政治家が対日関係を前進させるために大きな政治リスクを背負わなければならないことを理解すべきだ。

まずは、両国新政府がお互いに対する先入観を排して、対話をし、相互理解を深める必要があるだろう。来年2月25日の大統領就任式の直前となる22日の「竹島の日」を日本政府がどう扱うかが、朴槿恵政権の対日政策を大きく左右する可能性もある。大統領就任式に安倍首相が招待を受け、日韓首脳会談を行う環境を整えることができるかが試金石となる。

(プロフィール)にしの・じゅんや 1996年慶應義塾大学法学部政治学科卒、同大学院、韓国・延世大学大学院政治学科博士課程修了、政治学博士。

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