韓国・新大統領は「親日」か「反日」か 朴槿恵新政権とのつきあい方

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――新政権はどのような政権になりそうでしょうか。

朴槿恵政権は、経済問題であれ外交問題であれ、世論の動向を見ながら「是々非々」で対処していく政権になるだろう。一見、現在の李明博政権に似ているように見えるが、それを「あたかも自分がリードしているかのように見せる」のが朴槿恵的政治になるだろう。

言い換えれば、レイムダック化するまでの李明博政権を支えていたのは、経済成長を極大化するという意味の経済的合理性であるとすれば、朴槿恵政権を支えるのは、よりむき出しとなった政治的合理性になるだろう。

世論が支持すればリベラルな方向にも振れるし、時には経済的合理性を犠牲にしてでも政治的安定や韓国の国益を追求する、そんなタフな政権になると思われる。

もっとも、次期政権がこのような性格をどの程度、はっきりと維持していけるかは、政治的状況によって左右される。セヌリ党は、国会で過半数をわずかに超える議席しか維持していない。国会の外には、選挙戦途中で出馬を辞退した安哲秀氏を支持している勢力もある。

野党や国会外の勢力が掲げる政策の「空虚さ」を批判しつつ、果敢な権力闘争を通じて自らの政権を維持しようとするだろうが、それも限界に達した時、朴槿恵政権は大きく歩ピュリスティックな方向に振れる可能性もあるかも知れない。

―-日本は次期政権にどう対処すべきでしょうか。

 日本にとって重要なのは、このような「現実主義的な政治家」である朴槿恵の性格を捕らえて、対処することだろう。言葉を換えれば、かつて「未来志向」「東アジア共同体」といった曖昧で美しい言葉が安易に使われてきたが、現状をオブラート包むような外交はこの政権には通用しないだろう。

 逆に言えば、明確な政治的計算によって動かされる政権であるからこそ、日韓関係が、朴槿恵政権と韓国にとってどのように重要であり、またそれを改善することで朴槿恵政権がどのような利益を得られるかを明確に打ち出していけば、この政権はある程度動かせる可能性もある。

 そのためには、韓国の世論に対する配慮も必要だろう。仮に日本の新政権が竹島の日制定や、河野談話の破棄等の強硬なカードを次々と切った場合、韓国の世論は確実に悪化する。となると、朴槿恵政権が日本に対して配慮する「政治的利益」はなくなってしまい、日韓関係は政権発足当初から悪化することになるだろう。安易で無責任なイメージ外交ではなく、何がお互いに「利益」になるかを見据えて対応する。シビアでタフな交渉が必要になるだろう。

(プロフィール)きむら・かん 1966年生まれ。1992年京都大学大学院法学研究科修士課程修了。専攻は比較政治学、朝鮮半島地域研究。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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