FRBのインフレ目標政策の考え方 新たなコミュニケーション政策を導入(Fedウォッチャー)
これに対し、日銀の保有国債残高(変動利付債を除く)を金利リスク総量に換算すると、11年末259兆円から12年11月末300兆円と、41兆円増えている(16%増)。日本のGDPが米国の3分の1であることを考えれば、2011年末時点での金利リスク総量は日米でほぼ拮抗していたと言えるだろう。しかし12年に入ってからの増加ペースはFRBの方がはるかに速い。さらにFRBは今後1カ月5000億ドル相当のペースで金利リスクを加えていく(抱え込んでいく)のである。
短期リフレを許容する金利ガイダンス
新たな金利ガイダンスは、失業率が6.5%よりも高く、1~2年先のインフレ予想が「長期インフレ目標2%+0.5%」以下、かつ長期インフレ予想が安定している限り、超低金利政策を続けるというものだ。従来は、緩和解除の日付けを変更する政策決定プロセスが不透明という問題があったが、閾値を用いることによって透明性が大きく改善することになった。
これは、誰もが自らの経済予測に基づいて政策金利のパスを予想できるという意味である。そしてその分だけ、FRBの見通しには従来以上に万人を納得させる力(説明責任)が求められることにもなった。コミュニケーションに長けていると評価されるFRBは、その評価に甘んじておらず、「限界に挑戦しようとしている」(反対票を投じたラッカー・リッチモンド連銀総裁)のである。
今回FOMCが示したインフレ予想の閾値は長期インフレ目標を上回るため、厳格なインフレ目標政策とは異なり、「予想インフレ率を一時的に高めて経済活動を刺激する」ことが可能になった。かつてFOMCでも議論されたことがある「物価水準目標政策」下におけるリフレーションと同じである。
まずはリフレーションによって景気を刺激し、経済活動に勢いがついたところで長期インフレ目標への収斂を目指して金融を引き締めるという2段階のステップを踏むものだ。FRBの見通し上、インフレ率が2%を上回ることはなさそうだが、インフレの“のりしろ”を設けることで、金融緩和継続への期待をつなぎとめることができる。
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