巨額詐欺騒動に新事実 リーマン幹部も出資
病院再生会社「アスクレピオス」の破綻を機に発覚した巨額詐欺騒動で、新たな事実が判明した。321億円が回収不能となったリーマン・ブラザーズ証券の担当幹部が、同様の投資スキームに個人でも出資していたことが明らかになったのだ。場合によっては利益相反行為に当たり、「リーマン=一方的被害企業」という構図が修正を迫られる可能性もある。
リーマンが丸紅を相手取った民事裁判の訴状によると、問題の幹部はメリルリンチ証券などを経て昨年7月にリーマン入社、法人営業本部事業法人部のシニアバイスプレジデントに就任した。翌月からアスク社と協議を開始、10月29日から11月26日のわずか1カ月弱の間に、5回にわたり計371億円もの投資を実行した(50億円は回収済み)。
3年前から個人会社
一方、アスク社の破産申立書によると、匿名組合預り金の債権者一覧表に「(有)インテルウィット取締役」とあり、問題の幹部の氏名が並記されている。金額は6000万円で、個人としては大金。インテル社は2005年3月に設立され、本店住所は東京・本駒込にある幹部の自宅マンションと同じ。取締役は幹部本人と家族の2人だけ。目的欄には投資コンサルティング業務などが掲げられているが、営業実態はよくわからない。
アスク社の元社長と問題の幹部とは以前から親交があったようだ。アスク社と丸紅の元課長が中心となって組成した疑惑の投資スキームに、どの時点で個人出資したかは不明だが、結果は焦げ付いた格好。ただし、個人出資の傍らで、会社の資金を引っ張り込んだのなら、問題は重大だ。
関係者によると、昨年初めに5億円を出資したある上場企業は、丸紅が“支払い保証”するとした問題の投資スキームのいかがわしさに気づき、半年で解約した。書類に記載された病院名は架空で、印影も真正なものとは異なっていた。個人出資していたリーマン幹部が、そうした厳正な目を持ちえたかは疑問だ。幹部の振る舞いは利益相反行為に当たる可能性すらある。
はたしてリーマンは個人出資の事実について知っていたのか。社内ルール違反はなかったのか。広報部からは「係争中でもあり、一つひとつについては答えられない」との回答だけが返ってきた。
(高橋篤史 =週刊東洋経済)
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