円急落、国債暴落、金利大暴騰の恐怖も 過度な金融緩和政策のリスク

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短期資金を原資にする投資は不安定

以上で述べたことが起きるのは、国際間の資本移動が自由化され、実需原則が外されたからだ。しかし、それだけではなく、投資資金が短期化しているという事情がある。

これは、投資者が自己資金の何倍もの短期の借り入れを行い、投資総額を増やして投資しているからだ(こうした投資を、「レバレッジのかかった投資」という)。

金融緩和を行えば、短期金融市場での資金調達が容易になる。しかも、低コストで調達できるようになるため、投資の収益率が高くなる。こうして、金融緩和は、金融資産への投機的な取引を促す。そのためバブルが生じる。それが破たんして、実体経済を混乱させる。

金融危機前のアメリカでは、こうしたことが、典型的な形で生じた。投資対象は、住宅ローンを証券化した商品(MBS、CDOなど)である(これらの説明は、後の回で行う)。投資主体は、ヘッジファンドなどだ。また、銀行などの金融機関が投資専門の子会社を設立して、上記のような投資を行った。これらは、「シャドーバンク」(影の銀行)と呼ばれた(なお、実物投資が増えないわけではない。証券化商品への投資が行われれば、住宅ローンが増えて住宅建設が促進される)。

こうした投資は、不安定なものだ。なぜなら、経済条件が変化して投資対象の市場価値が下落すると、借り入れの際の担保条件を満たせなくなり、損を被るとわかっていても、投げ売りせざるを得なくなるからだ。これが一斉に起こるために証券化商品などの投資対象資産の価格が暴落し、それが連鎖的、副次的影響を生む。証券化商品の場合、格付け会社が格付けを急激に引き下げたために、このメカニズムで価格が暴落した。ユーロ圏での国債の暴落も、同じメカニズムで生じていると考えられる。

国債の市場は、もともとは安定的な市場だった。とくに日本の場合は、銀行や保険会社が預金や保険料を原資として長期的な運用を行う。仮に国債の市場価格が下落しても、国債を償還期限まで保有し続ければ額面通りの償還を受けることができるので、売却する必要はないため、不安定な相場崩壊は起こらない。

日本の国債市場はこうした投資家に支えられていたので、これまで欧米のヘッジファンドなどが何回か売り投機を仕掛けたが、ことごとく失敗に終わっていた。

多くの人が、日本の国債市場はいまだにこのようなものであると考えている。しかし、現実は急速に変化しているのである。

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