大幅な債務超過 赤字「am/pm」再建の正念場
東京23区を中心に展開する中堅コンビニ「エーエム・ピーエム・ジャパン」が債務超過であることが官報の決算公告からわかった。2007年度は営業赤字のうえ特損を計上し、債務超過額は122億円。収益率の高いコンビニ業界でこれほどの財務悪化は異例だ。
エーエム・ピーエムは04年、外食チェーン「牛角」で急成長していたレックス・ホールディングス(レックス)傘下に入った。そのレックス自身は業績不振に陥り、一昨年、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズと組んでMBO(経営陣による買収)を実施。アドバンテッジ主導の新経営陣で再建を図っている。
エーエム・ピーエムの債務超過の原因となった120億円の特別損失は、大半が店舗閉鎖と減損に伴うものだという。当初150店だった店舗閉鎖を200店近くにまで増やしたことも響いた。昨年3月、レックス社長に就任した小松崎行彦社長はコンビニ事業について、「(MBO前は)割高な経費構造を持ちながら、抜本的な改革がされていなかった」と話す。
都心出店の重し
エーエム・ピーエムは1990年に旧共同石油の全額出資で設立されたコンビニ業界の最後発組。当初、ガソリンスタンド併設型店を展開していたが、後発ゆえに知名度が乏しく、大手への対抗策に欠いた。転機はバブル崩壊後、大幅な地価下落を受け、他社が未開拓だった都心やビル内に集中的に出店したことだ。93年の赤坂のビル内出店を皮切りに、当時の100店体制から大量出店を続け、98年に1000店を突破した。
ただし急展開には負担も伴った。都心立地のコンビニは、地方に比べて高額な家賃を吸収するため、安定した売り上げが不可欠。だが、王者セブン‐イレブンをはじめ大手も都市圏に出店を重ね、インフラ面や商品開発力に劣る同社は苦戦を強いられた。規模拡大に商品開発や店舗運営の効率策が追いつかず、高コスト体質を克服できない。レックス傘下に入る直前の03年度は24億円の債務超過だった。
再び債務超過に陥ったことで、レックスが行った171億円の増資はすべて吹き飛んだ格好だ。だが「資金調達はレックスの信用で行っており、必要な運転資金を提供する。現段階で増資は考えていない」(小松崎社長)という。また、レックス傘下のスーパー・成城石井が増益基調で、不振だった外食事業も昨年のリストラ効果で採算改善が進んでおり、ここから上がるキャッシュもアテにしている。一方、レックス自身、MBOのために銀行から借り入れた約900億円の負債返済がある。子会社とはいえ、貸付金の確実な回収が不可欠な状況でもある。
今後、エーエム・ピーエムは再び都心部の出店攻勢に出る。商品開発の強化や店舗運営の効率化を進めながら、今年は小型店中心に150店、5年後をメドに1500店にまで拡大させる予定だ(現状1151店)。08年度から黒字転換を見込むが、業界の既存店売上高は8年連続で前年を割り込み、原材料高騰に伴う仕入れ値上昇もある。環境は平穏ではない。こうした中、店舗当たりの売り上げを増やすには、プロモーションや宣伝などで加盟店支援を行う本部の資金力もカギを握る。都心部の開拓を進めるのは大手コンビニも同じで、厳しい競争になることは必至だ。
レックスは向こう5年から7年内の再上場を目指しており、その間にエーエム・ピーエムは自力で122億円の債務超過解消を目指すシナリオを描く。07年度末でレックスの連結純資産は約30億円で、コンビニが計画どおり利益を上げられないと、グループに与える影響は大きい。まさにこれからが正念場だ。
(田邉佳介、井下健悟 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら