アジアには、民主選挙より独裁が向いてる? 欠如する民主主義のインフラ

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国民に必要な政策を推進する政治家を選ぶにはいったいどうしたらいいのだろうとよく議論されるが、これは昔からよく言われる“鶏と卵の関係”で難しい。有権者に選挙前に有用な判断材料を提供しきれていないマスコミにも問題はあるが、やはりこのような政権やマスコミを許してしまっている(親愛なる読者の皆様以外の)有権者の方々にも一層の努力が求められているのだろう。

優秀なリーダーが立候補し、安定政権を政策単位で選び、政策をモニタリングして評価するという循環がなければ民主主義はまともに機能せず、冒頭で私の中国の友人が言ったように“選挙のない一党独裁のほうがよっぽどマシ”という事態になってしまう。

政治家の椅子が多すぎる

行革を論じる上で決定的な問題は、政治家になろうとする候補者の質が、一般的には非常に高い日本人の高い資質から見たときにあまりにも低すぎる点だ。この原因の一つはやはり政治家になるのが簡単すぎるから、つまるところ“座れる椅子”が多すぎるからだ。

この“政治家の椅子が多すぎるのが、やはり何といっても問題説”は先ほどのランチタイムに水餃子を食べながら頭をよぎったことだ。本日、さんざん並んだ後にシンガポールのチャイナタウンの四川料理屋でキクラゲのあえものと水餃子、辛い豚肉をゆでたアパタイザーにミンチ肉のスープをたっぷり食べたのだが、値段は2000円未満で味も極めて美味である。安価なのにこんなにおいしいのは、周囲に同じように低価格で質の高い料理を出すお店がひしめいているからであり、これらは厳しい質と価格への競争の産物なのだ。 

現在、日本の政治家は衆議院や参議院の議員削減が取りざたされているが、意思決定の効率化という観点以上に政治家になる競争を厳しくするためにも、ドラスティックに削減したいところだ。今のようにちょっとタレントになって有名になったり、美人すぎたりするだけで、簡単に議員になれるのが間違っている。

「自分の責任でこの政策一つだけでも見える形で前進させます。それは私だからこそできることです」と言える議員や候補者がいったい何人いるだろう。しかしながら、あの衆院解散宣言の時も野田首相は自民党に議員数の大削減を迫って解散を打ち上げたが、その後争点としては早くも翳んでしまっている。

そもそも多数の議員を抱える既存政党が大胆に身を切ることができるわけがない。これはまだ大きな議員数を擁しておらず、議員の数を減らしても別に自分の身を切るわけではない新興勢力にのみできることだが、皮肉なことにその政党が大勝してしまうと同じ理由で議員削減は凍結されるだろう。

現在、有権者も質が低い議員に裏切られるのに慣れてしまい政治家の嘘に不感症になってしまっているが、どの政治家が、どの政策を実現するのに必要なのか理解しモニタリングする一層の努力が必要だ。橋下氏が盛んに批判している「選挙でネット使用が禁じられている点」を含め、政治家は有権者を“馬鹿な有権者”に保つことで国民からの適切な監査を逃れようとしているように思える。結果的に資質の低い議員による、国民の望まないどさくさに紛れた政策が展開されてきたのだ。

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