地味なパーク24が過去最高益を更新するワケ コイン駐車場「タイムズ24」が快走中

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ターニングポイントは、車両台数が1万台を超えたあたりからだ。その利便性を評価した法人利用に火が付いた。1万台を超えた2014年10月期、部門営業利益は、何とか1000万円の単年度黒字に転換する。いったん損益分岐点を超えると、会員数と売上高が比例して伸び、さらに効率化も進む、好循環が生まれた。

前2015年10月期は、当初5億円の部門営業益予想だったが、12億円超で着地。会社側は今期、同24億円を見込んでいるが、これも超過達成となりそうだ。すでに44都道府県に8000拠点ほどが展開されており、都内ではいたるところで、カーシェア拠点を見かけるようになった。カーシェア産業全体としても、認知度が高まり、導入期を抜けて成長期に入ったものと思われる。

自社駐車場内に設けたカーシェア「タイムズカープラス」の拠点。法人利用が広がっている

駐車場は地味な事業だ。「三井のリパーク」など、大手不動産デベロッパーも提供はしているが、ほかのセグメントと一緒くたにされて「その他事業」扱いになっているケースが多く、注目されにくい。だが、企業業績の拡大や建設工事の増加に伴い、足元の駐車場の需給は引き締まっている。価格改定が容易で、値上げ効果を享受しやすいこともあり、駐車場業界各社の業績は好調だ。

他社の駐車場事業も好調

駐車場が主力の上場企業としては、パーク24のほかに、パラカや日本駐車場開発がある。

パラカの場合、地方中核都市へのドミナント進出が奏功。今2016年9月期は5期連続の最高純益更新となりそうだ。5月に増配幅の拡大も発表している。また日本駐車場開発は、子会社で展開するスキー場が歴史的暖冬とスキーバス事故のあおりで苦戦し、今2016年7月期は営業減益となる見込み。ただ、主力の駐車場事業自体はいたって順調で、タイや中国で展開する海外駐車場事業も今期の黒字転換を達成しそう。スキー場の一過性要因が消える来期は、利益の急反発が期待される。

ちなみに「30分200円」といった、切りのよい価格設定になりがちなコイン式駐車場は、消費税増税にはめっぽう弱い。前回の2014年4月の消費税率引き上げ(8%)から、1年間は各社の業績が一時低迷した。

安倍晋三政権は次の消費税率引き上げ(10%)について、2017年4月から2019年10月へと先送りする意向。これも一時的な業績押し上げ要因となるだろう。パーク24の場合、2017年10月期の経常利益は、中期経営計画の240億円と比べると、数十億円程度押し上げられる可能性が高い。コインパーキングの隆盛も当面続きそうだ。

茨木 裕 東洋経済 記者

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いばらき ゆたか / Yutaka Ibaraki

1975年生まれ。「週刊東洋経済」編集部所属

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