ミタルとの関係強化は新日鉄にも利益がある−−ジョルジュ・シュミット ルクセンブルク企業・経済開発・通商局事務総長 アルセロール・ミタル取締役

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ルクセンブルク大公国の高級官僚にして世界最大の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタルの取締役。ルクセンブルク経済通商省の企業・経済開発・通商局事務総長、ジョルジュ・シュミット氏が持つ二つの顔だ。日本に例えれば、経済産業省の事務次官が、新日本製鉄の役員を兼ねているようなものである。国土面積は神奈川1県分の2586平方キロメートル、人口は東京都江東区より4万人多いだけの46万人。ルクセンブルクは世界で小さいほうから6番目の規模の国だが、産業政策が功を奏し世界一の国民1人当たりGDP(2006年8万7955ドル)を誇る。シュミット氏にミタルとの合併秘話、新日本製鉄買収の可能性、物流業での勝算などを聞いた。

-- 政府の役人が企業の取締役を兼ねるのはルクセンブルクではありふれたことなのですか。

政府が民間企業の株を持つこと自体そんなに多くはありませんが、鉄鋼、情報通信、エネルギー、航空、鉄道産業など戦略分野では政府が株を持ち、政府関係者が取締役会にも参画しています。

-- ミタルとの合併にはシュミットさん個人としては当初から賛成だったのでしょうか。

当初からということはないですが予見を持たず、すべてのオプションを検討することが大事だと思っていました。企業として最善の結果は何かを考えると同時に、政府を代表する立場から国益も考慮しました。

-- ルクセンブルクは昔から鉄鋼業の国でしたね。

確かにルクセンブルクの産業政策は1970年代半ばまでは鉄鋼業に主軸を置いてきました。19世紀末に鉱物資源が発見され、英国から技術を導入しました。近隣で燃料となる石炭が発掘されたのも大きかったのです。

-- アルセロールとミタル・スチールが合併した意義は。

世界的な潮流の中で起きたM&Aです。原材料メーカーや顧客である自動車メーカーが世界的な企業再編で数が少なくなった。そうした中で鉄鋼メーカー同士も合併して数を少なくする必要があった。ミタルとの合併は自然なトレンドです。それが政策によって支持されたという順序で、まず国の政策ありきの合併ではありません。

-- シュミットさんはミタルとの合併について、具体的にどうかかわったのですか。

ミタルとの合併協議には最初からかかわっていました。新会社の本社をルクセンブルクにとどめておくことが、政府として非常に重要だった。

92年にアルセロールの前身であるアルベットの取締役に就任して以来、私は政府の役職と鉄鋼会社の取締役を兼務してきました。02年に3社合併でできたアルセロールでも、株主である政府を代表する立場で取締役会に出席していました。現在でもルクセンブルクはミタルの株を3%保有しています。

ルクセンブルクは生産量が減ったとはいえ、国内でいまだに鉄鋼生産が行われています。鉄鋼業は現在でもGDPの2%を占めている。鉄鋼業の技術や生産活動がルクセンブルクに残ることが大事でした。

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