ミタルとの関係強化は新日鉄にも利益がある−−ジョルジュ・シュミット ルクセンブルク企業・経済開発・通商局事務総長 アルセロール・ミタル取締役

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-- そう判断したのは、税収面からですか、産業政策上の理由ですか。

両方ともありますが、どちらかといえば産業政策上の理由です。さらに言えばイメージも大きい。ルクセンブルクは、EUの基礎となった欧州石炭鉄鋼共同体(52年発足、ECSC)の発祥の地です。鉄鋼業が再び復活し脚光を浴びている中で、世界最大の鉄鋼メーカーの本社があることは、国のイメージとして大きな意味があると考えています。

-- 06年の統合交渉の際は、フランスをはじめとしたEU諸国は当初反対していましたね。

提案を受けた当初は、誰の目にも多くの疑問点がありました。合併によってもたらされる経済価値やシナジーがどのくらいあるのか、そもそも個々に成立している企業同士をなぜ合併させなければならないのか。これらの疑問点をいちいち潰していかなくてはならなかった。

また、ミタルが示した当初の製造プランはあまり魅力のあるものではありませんでした。その後、ミタルの説明を聞いていくうちに、徐々に、この合併による製造・販売面へのシナジー効果が理解されるようになっていった。06年央には10億ドルのシナジー効果が得られるという試算がなされました。

-- シナジー効果の最大のポイントは何でしょうか。

三つあります。一つの設備からより多くのアウトプットが得られること、物流網の拡大や財務基盤の強化による原材料の購買力強化、それに販売網の合理化です。さらに二つ付け加えるとしたら、管理コストの低減と資金調達コストの改善です。

-- ラクシュミ・ミタル会長は1・1億トンの粗鋼生産量を2億トンに引き上げる超拡大戦略を打ち出しています。これを支持しますか。

ミタル取締役会の一員として当然支持しています。原材料メーカーや自動車メーカーの統廃合が進み、大手企業は20~25%のシェアを持っています。こうした中、鉄鋼会社が統廃合を繰り返してシェアを拡大しないという手はないと思います。

-- 日本の鉄鋼関係者の多くは「ミタルが次に狙うのはアジアではないか」と言っています。次の買収ターゲットは世界2位の新日鉄なのではないですか。東アジアに本格進出する計画はないのですか。

新日鉄とは旧アルセロール時代から長い技術提携の関係があります。新日鉄は日本で、旧アルセロールは欧州で、ともに技術的なリーダーでした。新日鉄と共同で中国に投資もしています。グローバル化した顧客によりよい製品を提供するために、ミタルは、新日鉄との関係をより強化していくことに興味を持っています。関係強化は両社に利益があります。両社が生産能力や技術をますます共有するようになることが大事です。私たちはアジア全体について言えばインドに2カ所、年産2000万~2400万トンの工場を新設します。

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