ミタルとの関係強化は新日鉄にも利益がある−−ジョルジュ・シュミット ルクセンブルク企業・経済開発・通商局事務総長 アルセロール・ミタル取締役

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鉄鋼、金融の次は物流強化。勝算あり

-- 話題を変えます。なぜ、今、ルクセンブルクは物流ビジネスに注力しているのでしょうか。

04年に誕生した現政権が、前政権の調査結果に基づいて、物流を経済政策の中心に据えました。

製造や消費の世界地図が今大きく変わりつつあります。人々の役割分担が変わり、EUがサービス産業に傾倒しているのに対し、アジアや南米、アフリカは世界の工場として機能している。地理的にEUの中心に位置し、よいサービスを顧客に提供するメンタリティもあるので、EU全域向けの物流拠点として理想的だと信じています。

-- 海に面していないルクセンブルクの物流には限界があるのでは。

よく同じ質問を本国でも受けますが、物流業は単にモノを動かすだけではない。物流業の付加価値はサービス部分が大きい。それを提供するためのシステム構築が重要です。北海に面している港では貨物の混雑が今ひどい状況です。なるべく早く陸に揚げてすぐに仕向地に送りたい、というニーズが高い。ルクセンブルクはこうした港湾に対して、ITシステムを駆使してさまざまなサービスを提供できると自負しています。

-- 貨物航空機のカーゴルクスは大型機のみですね。

カーゴルクスの主なビジネスは大陸間輸送です。ルクセンブルクからEU域内へは陸送のシステムを構築しています。EU域内なら1日でかなりの範囲をカバーできます。

-- 日本は小松空港のみですが、中国には就航地が三つあります。

日本への就航はもともと福岡でした。就航認可が下りたので小松に替えましたが、日本政府にはもっと就航地の増加を含めて自由度を増やしてもらいたいと思っています。一方で、世界の工場である中国は、カーゴルクスにとっても重要な場所になっています。香港、台湾を含めると、中国からは週30便飛んでいます。

-- 金融で成功し物流強化というのはシンガポールに似ています。

ルクセンブルクのほうがサービス業に偏っている。最大の違いはルクセンブルクがEUに属し、EUの中心に位置していることです。

-- 1人当たりGDPで世界一になった秘訣は。

よく働いて国の競争力を高める以外に道はありませんよ。

(山田雄一郎、猪澤顕明 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

Georges Schmit
1953年ルクセンブルク市生まれ。76年ベルギー・カトリックルーベン大経済科学課程卒。78年 米ミシガン大経済学修士号取得。79~80年同大学社会研究所研究助手。80~81年独アプト・アソシエイツ研究所研究員。81年ルクセンブルク経済省入省。93年同省産業技術課長、「経済多様化法」諮問委員会議長。94年経済省事務総長。2000年EU企業政策グループ委員。05年より現職。ルクセンブルク経済開発局のメンバー、国立開発金融公庫(SNCI)副会長、アルセロール・ミタル、SESグローバル、ルクセンブルク国立貯蓄銀行、P&Tルクセンブルク、ポール・ヴュルト社の各取締役を兼任。

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