反核からラフォーレまで。熱量のある広告作り 新世代リーダー 長嶋りかこ アートディレクター

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

広告の場合、アートと違ってテレビから勝手に流れたり看板に勝手にあるものだし、発する側としては、受け手に積極的に理解してもらおうという期待はしていません。だからこそ、だれにでもわかりやすい、スピードをもって伝わるような表現をします。

でも一方で、受け手側に期待してもいいのでは、とも思うんです。受け手がそれぞれに感じ、考え、咀嚼する時間が持てるような表現があってもいいのではないか。それが発せられる場所に気を使う必要はありますが。発信する側も受け手側も、アンテナの感度や意識を高めていけば、いいものを発信し、いいものを受け取るという、いいスパイラルが生まれるのではないか。そう思うようになりました。

見た人が一拍おいて考えられるような広告

広告やプロジェクトに携わるときに一番大切にしているのは、そこで伝えたいメッセージです。ものをつくるということは、伝えたいメッセージがあるからこそ、それを形にして知ってもらうということだと思うんです。そのメッセージが世の中にとって意義があるのか、自分の美意識を最大限出して活用できているか、いつも考えています。

その企業の姿勢が自分とあわなかったら、正直うまくいかないと思っています。無理してそこをやっていた時期もありましたけど。それより、好きだな、いいなと思える企業のメッセージをかたちにすることに力を使いたいと思うようになりました。

デザインはとても時間がかかるし体力も精神も使うものだから、その時間を意義あることをしている人や企業のために使いたいなって。

広告は早く効率的に伝わることが大事だし、大量にコピーアンドペーストできたほうが楽に伝わりやすい面もあります。でも、そのせいで情報が記号化してしまっていて、受け手も考えなくなってしまっている。

でも私は、見た人が一拍おいて考えられるような広告をつくりたいんです。

表現者のとしてのターニングポイント

ファッションや流行の中心地にあり、大貫卓也氏や野田凪氏といった名アートディレクターが広告を通じて時代を発信し続けてきたラフォーレ原宿。2009年から年間広告を担当している長嶋氏は、東日本大震災の後の広告表現に迷いもあった。

震災が起きた次の年の年間広告は、どういう広告を打ち出せばいいのか迷いました。ラフォーレがある場所はたくさんの人がそのビジュアルを目にする場所です。街の人たちの空気に与える影響が少なからずあります。

世の中はいろんなことがゼロ、もしくはマイナスになったような感じもあった。でも、そんな状況から生命力を出して新しく何かを生み出していこうとしていた人もたくさんいた。ラフォーレからも「ラフォーレ自体も引っ張っていくような熱量のあるビジュアルを」という要望もありました。

マイナスになったものをゼロにしプラスにしていくことは、エネルギーが必要です。でもそのエネルギーは実は自分のなかにある。だから、震災を経て新しく世の中に何かを生み出していくこれからに向けて、「自分達が持っている生命力を発揮しよう」とみんなに伝えたいと思いました。街行く人やファッション業界の人たち、ラフォーレに向けてもです。

次ページ薪をくべて沸かす風呂とボタンでピッと沸かす風呂
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事