フィンテックで「保険難民」が大量発生する 「あなたの保険料は、来年から2倍になります」

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しかし今や、テクノロジーの進歩により、そうした選別が進展していく流れにある。加入者の事故歴や年齢だけでなく、運転技術やよく走る道路がリアルタイムで把握できるのだ。これにより良い運転技術を持っている人が、現状よりも安価な自動車保険に加入していく流れは不可避であるが、問題は、残された「良い運転技術を持たない人」の自動車保険料が現状よりも高くなってしまうことである。

たとえば、ある保険の加入者の内訳が、良い運転技術の人が50%、良くない運転技術の人が20%、普通の運転技術の人が30%とする。良い運転技術の人が「なぜ自分の保険料が、良くない運転技術のドライバーと同じなのだ」と不平を抱くのは自然なことであり、保険会社としては優良ドライバーに保険料の割引を提案せざるをえなくなる。

だが、仮に良い運転技術の人の保険料が4割引になってしまうと、総額の保険料と普通の運転技術の人が支払う保険料が変わらないと仮定する場合、良くない運転技術の人向けの保険料は倍額にしなければならない。

保険商品が運転技術によって細分化されていくと、現状の倍額以上の保険料を求められ、保険に入れない人が多数発生することになる可能性も否定できない。

生命保険でも保険難民が生まれる

このことは自動車保険だけでなく、生命保険でも起こりうる。これまでは「将来誰が病気になるか」ということがわかりづらかったので、保険料も差をつけることがあまりできなかった。しかし、たとえば、ウエアラブルな機器によって生活習慣を保険会社が把握し、その分析結果を保険料に反映するような社会が訪れれば、自動車保険と同じように、良くない生活習慣を持つ人の保険料が高額になってしまうことが起こりうる。

考えようによっては、これまでの保険は、「事故を起こす(疾病にかかる)」可能性が低い加入者と、その可能性が高い加入者を一括りにすることで、本来なら後者がすべき負担を前者がカバーすることで成り立っていた。それがフィンテックによって、それぞれ適正な負担をすることになるのは、ある意味、いびつな構造の是正とも言える。

だが結果として、高額な保険料のために保険に加入することができない人を増加させることが、保険としてのあるべき姿なのかという問題は残る。

今後テクノロジーの発達により、どんな新しい保険商品が生まれ、どこまで普及するかは定かではない。しかし、良い運転、良い生活習慣が今よりも必要な世界がやってくることはまちがいないだろう。今から準備しておいたほうがよいかもしれない。 

加藤 洋輝 NTTデータ経営研究所マネジャー

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かとう ひろき / Hiroki Kato

NTTデータ経営研究所マネジャー。金融戦略コンサルティング部門 金融政策コンサルティングユニット。2004年東京理科大学大学院工学研究科経営工学専攻修了、同年NTTデータ入社。金融分野における企画業務に従事。2015年よりNTTデータ経営研究所にて、事業戦略の立案や新規ビジネス創出等のコンサルティングに従事するほか、地方創生や地域活性化をキーワードに自治体の支援に取り組む。2014年度静岡大学非常勤講師。

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桜井 駿 NTTデータ経営研究所コンサルタント

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さくらい しゅん / Shun Sakurai

NTTデータ経営研究所 コンサルタント。金融戦略コンサルティング部門 金融政策コンサルティングユニット 兼 デジタルコグニティブサイエンスセンター DCSマーケティング推進室。2012年に大学卒業後、みずほ証券株式会社を経て現職。金融機関の新規事業開発・事業戦略策定、業務プロセス改革等のほか、人工知能やロボティクス、IoT、データサイエンス、脳科学を活用した金融分野の新規サービス開発・マーケティング支援に従事。国内外のスタートアップ企業動向を得意とし、大企業によるオープンイノベーション支援にも取り組む。

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