「地域再生の進まない街」が抱える残念な特徴 気鋭の経済学者が日本経済復活のカギを語る

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このような地方の問題を語るときに3つキーになる考え方があります。ひとつは加藤久和(明治大学教授)氏の指摘する東京一極集中の問題。「増田レポート」の元ネタになったデータです。一方で市川宏雄(明治大学教授)氏による、むしろ東京への一極集中が必要なんだという議論。その一方で小田切徳美(明治大学教授)氏は中山間地域における小規模集落からの地域再生を提案している。

代表的で先鋭的なアイデアがいずれも明治大学教授から発信されているわけですから、明治大学からいっちょ先鋭的じゃないまとめを提供してやろうじゃないかと。まぁ僕は准教授ですが。それぞれの議論を単独で読んでいると「これが答えだ!」みたいに思ってしまいがちですが、地域の実情はバラバラなので答えはそれぞれ違う。

であれば、どの地域にも共通する原理原則を語らないといけないわけです。かたや「人口減少で自治体は危機的状況だ」といい、東京一極集中組は「東京を世界のグロースセンターに」と叫び、さらには「限界集落で新規ビジネスが」みたいな話になる。それぞれ一理あるんですが、じゃあどうするのかというと、原理原則にのっとって、どの方向に目標を達成するのか。1人当たりの所得を高めていくことなしには何もできない。「じゃあ高めるにはどうしたらいいんですか?」っていうのを書いていこうと思ったんですよね。

地域再生の定義とは

常見:地域再生が成功した状態の定義として「そのエリアの1人当たりの所得が高くなることだ」と飯田さんは言い切っている。批判を誘発する表現かもしれませんが、何をもって地域再生ができたのかを定義してから議論したのが良いと思います。

私はいかにも学生とか若者向けに講演している人のように見られていますが、実は講演依頼で最も多いのは、若手人材採用に関する講演で、しかも地方からの依頼が多いのです。自治体、商工会議所が主催する経営者や人事部長が集まるイベントで、地方の中堅・中小企業が採用活動で成功するためにはどうすればいいかという話をしています。この仕事は意義があるから全国どこでもいくんです。

私自身の問題意識も高まってきた中で声をかけてくれたのが石川県でした。県のスタッフとも、地元企業の人事の方とも意気投合しました。昨年度は、「いしかわ採強道場」という地元企業の採用力を強化するためのワークショップを手がけました。今年度からさらに「いしかわUIターン応援団長」に就任しました。

飯田:2013年以降、一番鋭角で雇用が回復していて、いちばんどのように人を採用するかがボトルネックになっているのが北陸三県なんですね。北陸新幹線の話かと思われるかもしれませんが、むしろ観光以上に製造業が元気。もともと製造業が強い地域なので、超円高状態から抜け出したことが大きな追い風になった。

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