「地域再生の進まない街」が抱える残念な特徴 気鋭の経済学者が日本経済復活のカギを語る

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常見:そうなんですよ。石川県といえば、皆さんが想像する会社は建機大手のコマツですよね。でも実はそれ以外にもシェアトップクラスの工業製品が意外と多いんです。あるいはピリリと光る企業。例えば液晶ディスプレイの企業は石川が多くを占めます。EIZOとかIOデータなどがそうですよね。

さらに、車に乗っている方は、ガソリンスタンドにある門の形状の洗車マシンを見たことがあるはずです。あれも石川県が国内シェアトップです。他は、オリンピック選手の衣装の素材を提供しているのは石川県の企業だったりする。スキャナで高いシェアを誇るScanSnapを作っている富士通系のPFUも石川。その製品がないと「プリウス」(トヨタ自動車のハイブリッド車)が動かないぞっていう部材を手がけているメーカーもあります。

面白いモノづくり企業がたくさんあって。産業の構成の中でも、製造業の割合が高い県なんですけど、採用は苦労している。進学と就職でどんどん人が出て行くのですね。全国的な構造問題でもありますが。

飯田:地方都市のいちばん大きな問題は、中堅社員の調達だと思います。少なからぬ地域で工場労働者はなんとか集められる。一方で中堅どころ、イメージとしてはFランクじゃない大学や高専を出ているホワイトカラー・技術者層をどう確保するかというと急に壁にぶち当たってしまう。まったく縁がない――出身地でもなんでもないところにこういう人材を引っ張ってくるのは難しい。だから、UIターンをどうやって誘発するかが問題になります。一度進学で関西や東京に出ていった人をどうやって呼び戻せるかどうかで伸び幅が変わってきちゃうんです。

世界中から優秀な人材を集めたい!

進学と就職でどんどん人が出て行くという全国的な構造問題もある

常見:ありますよね。UIターンしてくれって企業とか自治体が叫んでも、やっぱりライフイベントが関係しますからね。「この企業があるからこの場所にいきたい」ってトヨタ自動車クラスや、よっぽど独自の製品や技術を持った企業ということになります。以前、トヨタの人材開発責任者だった方に「採用の課題はなにか」って質問をしたら、彼の答えは、「常見くん、いかに関ヶ原と箱根を超えてやってきてもらうかってことだよ、カカカ!」って言われたことがあって(笑)。意訳、超訳すると、世界中から優秀な人材を集めたい、と。

飯田:グローバル企業といいますか、全国レベルの企業はがんばれ、勝手にやればなるようになるという側面もある。しかし、地場の優良企業にとってはかなり厳しい状態ですよね。なぜ厳しいかというと、これまでそういう採用をしてこなかったんですよね。どう売るか、どう商品開発するかは、親会社だったり発注元だったりがある程度決めてくれていた。

だから経営層と、いわゆる作業をしてくれる人、正確な熟練労働を提供してくれる人の2パターンで経営できていたワケです。

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