渡邉:だから自殺してしまうんですかね。
藤原:そう。その質問は日本ではタブーになっちゃってるけど、的をついていると思う。キリスト教圏だけでなくイスラム圏でも本来教会が果たしている機能が日本では甘いことが、自殺を増やしている。西洋社会では、負けたときには宗教があり、勝ち組の踏み台としては大学があるんだけど、日本にはそれがないから、自分で作らないといけないわけです。
この2つの受け皿が本当は社会に必要で、それをどこにどう作るかを、日本はもうちょっとまじめに考えないといけない。しかし、そういう社会システム論のような考え方が、今の政党にはまったくないですね。しかも、この問題は省庁を超える。厚生労働省も文部科学省も警察庁も総務省もすべて絡む話ですよね。
こういう受け皿がないと、今登っている一本線の道が閉ざされたとき、「死ぬしかない」となってしまう。だから、『坂の上の坂』の講演会でも、「20代なら2つ、30代なら3つ、40代なら4つ、50代なら5つくらいの山を並行的に作って、10〜20年くらいで乗り換えていかないと駄目ですよ」と言ってるんです。
要するに、今登っている山、それはだいたい会社だけれど、その他にもやがて山に育てる裾野をつくっておかないといけない。それは、地域社会でもいいし、自分が鉄道オタクだったら鉄道コミュニティでもいい。ネットも含めて、コミュニティはいっぱいあるから、もし今の会社で食えなくなったら、ほかのコミュニティで食う道を探すこと。
自営業の参入レベルが下がっている
渡邉:しかし、会社以外のそうしたコミュニティで食えますかね?
藤原:簡単に食えるようになるわけではないけれど、コミュニティでの活動を本格化していけば、前回も言ったように「●●コンサルタント」「●●カウンセラー」「●●セラピスト」みたいな感じでお金をもらえるようになる可能性は出てくるでしょう。ましてや、好きなこと、関心あることの延長なのであれば、苦労する甲斐もあるはずです。
さっきから何度も、渡邉さんは「食っていけますか」という質問をするでしょ(笑)。それは非常に大事な質問なんだけど、それに答えるときには重要な前提がある。それは、損益分岐点、つまり最低限の必要レベルがこれから下がっていくということ。
一つは、第2回目の対談で話したように、住居費が下がる。相続で親から家を引き継げば、管理費ぐらいしか払わなくてすむようになる。
もう一つは、自営業、欧米で言うセルフエンプロイドの参入レベルが、非常に低くなっていく。
昔の感覚からすると、花屋を出店するためには、1500万円くらい開店資金が必要だという感じだった。でも、今はネットを使えば、ある特化した分野に絞ることで、5〜10万円でも花屋をオープンできてしまうわけですよ。
たとえば、被災地で白ではない色の蘭に特化して、それを徹底的に育てて売るとか、そういう商売ができる世の中になってきていると思う。 そうしたビジネスで、年収2000〜3000万を稼ぐのは難しいだろうけど、200〜300万レベルであればいけるんではないかと。従来型の産業社会的な常識では捉えきれないものが、出てきているんです。実際、ネットのアフィリエイトで食っている奴だっているでしょ。