ユーロ「復活」の可能性は85% メルケル首相に近い有力経済人が診断
スペインは 追加経済改革が必要
ただ、スペインの場合、中央だけでなく地方政府の財政も危機的な状況だ。地方の公務員数はこの7年で50%も増加した。国全体では労働市場改革や時間当たり労働コストの削減も不十分だ。公務員のみならず民間の人件費も圧縮する必要がある。
こうした中で、追加の経済改革を実施するとき、どのようなやり方を取ればいいのか。個人的な意見だが、スペイン政府が欧州安定メカニズム(ESM)、IMFに対して改革プログラム推進を約束したうえで、支援を要請することがユーロ圏全体の安定には重要だろう。なぜならば、そうした同国政府によるコミットメント自体がイタリアやフランスへの伝播を防ぐファイアウォール(防火壁)にもなる。
――欧州中央銀行(ECB)による過度の国債購入には反対でしたが…。
現在、ECBがやろうとしていることには同意する。財政難に陥った国の国債購入はあくまでも、当該国が改革プログラム推進を約束するのが条件だからだ。
ECBは通常、インフレにならないよう物価水準を監視するのが任務。その意味で、国債購入は本来の作業とはいえないが、今は「ユーロ圏安定化のため」という名目で正当化することは可能だ。
――フランスでは、オランド政権が打ち出した富裕層への最高75%の所得課税をめぐり、賛否両論です。同国一の富豪といわれるLVMHのベルナール・アルノー最高経営責任者がベルギー国籍取得表明したのに対し、「課税逃れ」との批判が相次ぎ、富裕層の国内離れを懸念する声も高まりました。
オランド大統領が本当に財政の安定化を目指すならば、そして、財政赤字を対GDP比で3%以内に収めようとするならば、税収を上げるしかない。税金を広く、薄く徴収しなければ、税収増にはつながらないだろう。
富裕層に対して集中的に課税をしようとすれば、出て行かれてしまうリスクを抱える。企業や企業家に過度の税負担を強いるのは賢いやり方ではない。活動レベルが低下してしまう。経済成長を維持するため、企業や企業家には国内にとどまってもらわなければならない。
――ドイツの景気も減速傾向です。Ifo経済研究所の景況感指数は11月こそ持ち直しましたが、10月まで6カ月連続で下落していました。
同指数はムードを表しているだけで、実体経済を映し出しているものではないことに留意すべきだろう。むろん、スローダウンしているのは確かだ。ユーロ圏全体の景気後退の影響は避けられない。
ドイツのGDPに占める輸出の割合は約50%。輸出はユーロ圏向けが4割を占める。つまり、対ユーロ圏輸出が落ち込めば、GDPベースで2割程度の押し下げ圧力が働くというわけだ。それでも、新興国や米国向けの輸出は増えている。国内消費も底堅く推移し、輸出の落ち込みを補っている格好だ。
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