背後に偽造手形騒動、富士通幹部が突如辞任

背後に偽造手形騒動、富士通幹部が突如辞任

富士通で異例の幹部交代があった。半導体の新子会社・富士通マイクロエレクトロニクスの社長で、本体の副社長でもある小野敏彦氏が8日に突然辞任したのだ。不振の半導体事業再生を担い3月下旬に会社を設立してわずか19日目での交代。富士通は同日、富士通マイクロの岡田晴基取締役を昇格させる人事を発表、小野氏については「一身上の都合。詳しい理由はわからない」とした。

辞任劇の背景に浮上するのは、ある偽造手形騒動だ。松下電工の関連会社などを振出人とする偽造手形が西日本を中心に流通。額面は500万~5000万円で、総額は数億円に上るとみられる。問題の手形の多くで受取人となっているのは「科学技術教育協会」という都内の財団。実はそこの理事長が小野氏なのだ。しかも、富士通によると、小野氏は会社に無断での就任。財団では手形不渡り歴のある九州出身の経営者がなぜか理事に就任するなど、不審な点が少なくない。

財団事務局によると、小野氏は昨年9月、前任者が任期途中で辞めた後任として就任。教職員退職者が理事の過半を占め、教職員向けパソコン検定試験を主要事業とする財団で、電機メーカー幹部がトップに就くのは初めてだった。が、どのような経緯で小野氏が財団と接点を持ったかは不明。理事の1人は「わからない」と繰り返すだけだ。

提携交渉の真っただ中

不可解な点の多い小野氏の辞任は、富士通の戦略にも影響しかねない。同社は次世代半導体の開発提携で、東芝・NEC陣営と韓国サムスン電子陣営のどちらに参加するか選択の瀬戸際にある。開発負担を軽減できる提携は、赤字が続く富士通の半導体には喫緊の課題だ。小野氏はこの提携交渉の最前線に立ち、かつて自らが提携を破談にした東芝とあらためて交渉を重ね、先月には韓国にも足を運んでいた。東芝派、サムスン派で二分される社内をまとめるうえでも、リーダーシップを握る小野氏の存在が重要だった。

後任の岡田社長は14日の就任会見で「辞任による社内外の動揺は収まった。戦略に変更はない」と強調。が、社外では、今夏にも決着を目指していた交渉に影響が出ると懸念の声もある。会社側によると、小野氏に退職金を支給するかは未定だという。
(杉本りうこ 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

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