しかし、栗山には本塁打を量産するようなパワーはない。
そこで重視したのが、2塁打だった。それは、時代の流れを受けてのことでもある。11年に統一球、いわゆる“飛ばないボール”が導入されてから、球界では本塁打数が激減した。だから栗山は、2塁打に目をつけた。12年シーズン開幕前、彼はこんな話をしている。
「統一球になってホームランを打てるバッターが減っている分、2塁打を打てるバッターが貴重になってきました。チームからも必要とされるし、いい役割を果たせると思います。外野の間を抜いたり、シングルヒットの当たりでも走塁で2塁打にする。そういうのも含めて2塁打を多く打ちたい」
来シーズン、どんな変化を見せるのか
09年は24本だった2塁打が、10年は35本、11年は30本に増加した。しかし、12年は17本に減少する。8月21日のソフトバンク戦で死球により左尺骨を骨折し、103試合目で戦線離脱となった影響が大きい。1番を任され、出塁率を重視したことも背景にあるだろう。
だが、きたる13年シーズン、栗山は長打を求められる。3番を打ってきた中島がメジャーリーグに移籍する可能性が高く、4番の中村は10月に左ヒザを手術し、全治6カ月でシーズン後半から合流する見込みだ。渡辺久信監督は栗山を3番で起用する可能性を示唆している。打順が1番から3番に変われば、当然、チームの中で果たすべき役割も異なってくる。
高校時代にパワーヒッターだった自分を安打製造機に変身させることで、プロ野球界のトップまではい上がった栗山巧。チームきっての努力家は来季、どうやって長打力という上積みを自身に加えるのか。
段階を踏みながらステップアップしてきた栗山の新たな挑戦が、今から楽しみでならない。
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