ランニングシューズ戦国時代、ブームの陰に知られざる攻防
正月恒例の箱根駅伝。今年は東洋大学の圧勝で幕を閉じた。MVPに輝いた柏原竜二選手をはじめ、東洋大の選手がテレビ画面に大写しされたことは記憶に新しい。
その活躍をアシックスの福井良守マーケティング部長は、複雑な思いで見つめていた。
「悔しいが目立っているな……」。視線の先にあったのは、東洋大のユニホームや主力選手のシューズに刻まれた模様。ライバルである米ナイキのブランドマークだった。
ナイキジャパンは東洋大のほかに駒澤大学、早稲田大学などの駅伝チームにランニングシューズやウエアなどの自社製品を無償で提供するサポート体制を組んでいたようだ。
駒大、早大は東洋大と並んで今シーズンの「3強」と目されていた。ナイキ側は明言しないが、3強との強い結び付きは日本のランニング市場におけるブランド価値を高めようとする戦略の一環だろう。「どれだけの人が気づいたかはわからない」(アシックスの福井氏)が、日本中が注目する箱根駅伝のトップ選手がナイキ製品を使っている事実は、ブランドを訴える機会となった。「巻き返しを考えなければ」。アシックスの福井氏にこう言わしめた。
日本は今、ランニングブーム真っ盛りだ。2月26日の開催で第6回目を迎えた「東京マラソン2012」には、約28万4000人が応募。抽選倍率は10倍近くに上った。昨年10月には大阪マラソンも初開催され、大阪の街を約3万人のランナーが駆け抜けている。
東京マラソンを起爆剤にランニング市場は拡大中
笹川スポーツ財団の調べによると、2010年時点における日本のランニング人口は推計883万人。東京マラソン開催前の06年と比べると278万人も増えた。
人集うところにビジネスあり--。景気低迷下の日本にあって、今やランニング関連市場は数少ない成長分野だ。中でも着実な成長を遂げているのが、ランニングシューズである。
矢野経済研究所によると10年の国内ランニングシューズ市場(出荷金額ベース)は、前年比8・4%増の465億円に拡大した(図)。スポーツシューズ全体が1%増と伸び悩む中で、高い成長率が目につく。