ランニングシューズ戦国時代、ブームの陰に知られざる攻防


矢野経済研究所は、11年もランニングシューズ市場が前年から5%程度伸びると予測。4年前と比べると市場規模は約3割拡大する計算だ。「これまで首都圏を中心としてきたランニングブームが、西日本など地方にも波及してきており、12年もプラス成長は間違いない」と、野島国夫上級研究員は見ている。

この分野において、日本が生んだ世界的なスポーツブランドであるアシックスは、国内市場において頭一つ抜けた存在だ。シェア調査は、各マラソン大会に参加しているランナーのシューズを確認するという手作業で行われるためブレが大きいが、アシックスは5割近くを占めていると推定されている。

一方、国内勢のライバルであるミズノのシェアはおおよそ15%。実は今年の箱根駅伝を走った選手のブランド別シューズ選択率は、アシックスとミズノがそれぞれ4割程度と分け合った。国内トップレベルの選手向けでは互角の争いを演じる両社だが、エリートランナーは必然的に数が少ない。売り上げの多くを占める初・中級者向けで差がついている。

野球やゴルフなどのイメージが強いミズノに対し、アシックスは1959年に、当時としては画期的なマメのできにくい構造のマラソンシューズを作るなど、ランニングシューズ分野をリードしてきた。ミズノの三宅浩・ランニングシューズ企画課課長は、「長年の実績で培われた信頼感の差が出ている」とアシックスの歴史的な努力を認める。

もっとも、両社とも市場拡大の恩恵を同時に受けている。アシックスの12年3月期の売上高は、ランニングシューズの伸びを主要因とし、前期比6%増の2500億円となる見込み(東洋経済予想)。第1回東京マラソン直後の07年3月期と比べ3割近くもの成長だ。

ミズノも、ランニングシューズの売り上げはここ5年で1・5倍になり、野球やゴルフ用品の不振を下支えしている。ほかのスポーツと比べても手軽に始められるランニングは、景気悪化の影響を受けにくい。

また、アシックスは米国で日本の9倍、欧州で同7倍もランニングシューズを売り上げている。人口の差を勘案しても、欧米のほうが圧倒的に売り上げは多い。この差について、アシックスの加藤克巳執行役員は「米国や欧州に出張すると、早朝に外出しても走っている人がたくさんいて、ランニング文化が根付いている。日本もまだこれから伸びる余地がある」と期待を寄せる。

この日本市場に目をつけて攻勢をかけてきたのが巨大グローバルスポーツブランドの独アディダスと米ナイキだ。両社はスター選手と契約してブランドイメージを消費者に訴えることで、ウエアやスニーカーなどのグッズを売り込む「トップダウン型」のマーケティングスタイルを得意とする。マラソン分野において、アディダスは男子世界記録保持者のパトリック・マカウ選手と、ナイキは女子世界記録保持者のポーラ・ラドクリフ選手と契約を結んでいる。

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