「地震保険は損だ」という考えが危ない理由 日本は地震国「安全な地域はない」と心得よ

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阪神・淡路大震災のときもそうだった。筆者は避難所暮らしこそ経験しなかったが、給水などのライフライン確保や知人との面会など何かしらの用事で避難所にいることが多かった。震災から1カ月を超えた頃からだろうか、避難所に行く度にそこかしこから仮設住宅も含めた住宅再建や仕事復帰に関する悩みの声が多く聞こえてきたことを覚えている。

地震発生から時間が経つと、おカネの工面がつく人やその土地に居る必要が無い人などが徐々にではあるが避難所を離れていったこともあったからだろう。避難所に残っている人にはそれぞれ事情はあったかと思うが、先立つものがなければ何もできないという人も多かったのでは、というのが現場にいた実感だった。

そこで重要なアイテムになってくるのが保険だ。ただ保険も万全ではない。気をつけなくてはいけないのは、一般的な火災保険など多くの保険商品が地震を免責にしているため、地震被災時に保険金が支払われないことがあることだ。

これは地震のように同時に多額の保険金が支払われることを想定しないことで保険料が算出されているためで、仮に地震まで補償に含むととてつもなく高額の保険料になり、そもそも保険に加入することができなくなる。

そのため居住用の建物や家具などの家財については、通常の火災保険に加えて地震保険に加入することで地震による被害についても補償することにしており、この趣旨から地震保険は火災保険とセットでしか加入することができない仕組みになっている。

地震保険の世帯別加入率は3割にも満たない

地震保険は特殊な保険だ。通常、保険金支払いの責任は保険会社にあるため、保険会社が保険料から将来の保険金を積み立てている。対して地震保険は同時に多額の保険金の支払いが必要になり個別の保険会社だけでは対応が難しくなることも想定されることから、地震保険法という法律により政府も再保険として保険会社からさらに保険として支払い責任を引き受ける仕組みになっている。一定額以上の支払いが発生した場合は、政府も支払保険金を補償することになる。

東日本大震災では損保、共済を含めて約2.1兆円の地震保険金の支払いがあったが、どんなに大きな災害が起こっても保険会社が破綻して保険金が支払われない、という事態は起きない仕組みになっている。

仕組みとしては万全を期している地震保険だが、1966年の創設以来悩ましいことがある。加入率が思うように伸びていないのだ。損害保険料率算出機構が発表している最新の2014年度の数値でも、全世帯数の3割にも満たない28.8%しか地震保険に加入していない。もうひとつ考えたい数値がある。地震保険の火災保険への付保率が同じく2014年度の数値で59.3%しかないということだ。

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