3メガバンクの業績ピークアウトが鮮明に 海外の資源関連融資の不良債権化が重荷

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MUFG全体の今期の与信関係費用は2100億円と前期の2551億円から3期ぶりの減少を見込むが、海外貸出残高は前期末で43兆円に上り、世界経済の減速が一段と進めば、与信関係費用は想定より膨らむ可能性がある。

黄信号が灯る1株益目標の達成へ、自己株取得も活用する意向を示した三菱UFJの平野社長(撮影:今井康一)

MUFGの持分法適用会社である米モルガン・スタンレーも国際金融市場の混乱を背景にトレーディング部門やホールセール証券部門などが悪化し、今年第1四半期の純益が半減した。MUFGの連結決算には四半期遅れで計上されるためMUFGの今期業績を下押しすることになりそうだ。

また、MUFGは同日、2億3000万株・1000億円を上限とする自己株式取得も発表した。これは中期経営計画の目標達成を意識したものと見られる。

というのも、中計では、2018年3月期に1株当たり純利益(EPS)84.2円以上という目標を掲げている。2016年3月期のEPSは68.51円で、現在の利益水準から見ると、目標達成には黄信号が灯っている。平野信行MUFG社長は「目標達成に向け最大限の努力をしていくが、その手立ては分子(純益)だけでなく分母(株式数)の両方にある」と語る。自己株取得・消却により株式数を減らし、EPSを高める方法を意識している。

国内の総合職を3500人減らす構想も明らかに

さらに経費削減策として、今後10年程度をかけて国内の総合職を3500人減らす構想も平野社長は明らかにした。シニア活用や地域限定社員にシフトすることで人件費を削減、ネットでは1600人の人員削減につなげるという。

一足早く5月13日に発表した三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)とみずほフィナンシャルグループの今期業績見通しも冴えない内容だった。マイナス金利の影響が広がり、みずほの最終利益は前年同期比10.5%減。SMFGも、前期に計上した株式減損や過払い金引き当ての影響を除けば実質減益見通しになっている。歴史的な低金利という逆風下でも、銀行・証券・資産運用などあらゆる金融業務を取り込んだユニバーサルバンク化が奏功し、過去最高益で我が世の春を謳歌したメガバンク。が、その流れは確実に転換点を迎えている。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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