安倍自民党総裁の金融政策を全否定 白川日銀総裁会見

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①金利をゼロにすると、(短期金融市場での取引のインセンティブが低下し)市場参加者がいざというときに資金調達ができるという安心感がなくなる。

②額面が保証されてマイナス金利のつかない銀行券へ大規模な資金シフトが生じる。

③マイナス金利のコストを民間銀行が貸し出し金利に上乗せすると、結果的に金融環境が引き締まることになる。

④中央銀行のオペレーションに応じて資金調達するとコストがかかるので、民間銀行がオペに応じなくなる。

というもので、弊害が多いことを強調している。

12月は米FRB→総選挙→日銀の政策会合

安倍総裁は「金融政策については日銀法改正も視野に入れる。大胆な金融緩和を行っていく」と話しているが、今のところ、具体的にどのような変更をするのかは不明だ。法改正議論について白川総裁は、「中央銀行の独立性は長い経験の中で培われたもの。あくまで一般論として、独立性というものをぜひとも尊重してほしい」とし、「仮に、日銀法のような経済、金融の基本法について改正議論を行うのであれば、十分に時間をかけて慎重な検討を行う必要がある」と述べた。

また、「(大胆な金融緩和を)やってもみないでどうなのかという議論がある」との問いに対しては、白川総裁は「やってもみないでという言葉を使われたが、日銀はまさに、やってきている」といくぶん語気を強める場面も見られた。

政策金利がゼロに到達し、政策金利を引き下げて金融緩和を図るというオーソドックスな手法を失った今、何とかひねり出している金融緩和策は複雑化するばかり。実際、「ごく普通の人からすると、金融政策の細かい技術的なことは理解しにくいというのが現実」と、白川総裁も認めるところだ。

金融緩和を行っているにもかかわらず、企業の借り入れは増えず、超低金利でも家計の預貯金残高が膨らんでいる。おカネが実体経済へ出ていかない。日銀は金融面だけでなく、「成長力の強化」が重要だとかねて強調しているが、複雑な金融緩和の効果について広く理解を得ることが難しい状況でもある。

次ページ12月には追加緩和を迫られる日銀
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