厚生労働省を分割するメリットとデメリット 将来像を議論する土台がようやく整ってきた

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これも一つの契機となり、麻生太郎首相(当時)は、厚労省を2つの省に分割する具体案を検討するよう指示した。その際、厚労省を単純に2つに分割するだけでなく、内閣府や文科省の関連部局の統合も含めて、医療や介護や年金などを担当する「社会保障省」と、雇用や少子化などを所管する「国民生活省」とに分割する案が浮上した。特に、国民生活省に、幼稚園や保育所などを一元的に担当する「少子化・児童局」を新設するという案が出された。

ところが、この幼保一元化が、パンドラの箱を開けることになった。文科省や幼稚園関係者は「3歳児以降は、小学校との接続を含め学校教育体系の中で、福祉ではなく教育を担当する省庁が責任を果たすべきだ」と主張した。他方、保育関係者も、幼稚園を含んだ一元管理に反対した。結局、幼保一元化をめぐる対立が引き金となり、麻生首相が2009年5月28日に厚労省分割を見送る判断を下し、分割論は幕を下ろした。

提言で示された3つの分割案

その後、厚労省分割論が表立って議論されることはなかったが、厚労省の職務や国会に提出する法案の数は、他の省庁と比較して突出したものとなっている。前掲した「厚生労働省のあり方について」には、興味深いデータが示されている。

2016年度当初予算における一般会計での一般歳出(国債費と地方交付税交付金を除く歳出合計)に占める厚生労働省所管の歳出は52.4%に達しており、次いで多い国土交通省の10.2%を大きく引き離している(筆者調べ)。2015年通常国会における政務3役(大臣、副大臣、政務官)の国会答弁回数も、厚労省は3584回と、次いで多い外務省の2086回よりはるかに多い。

2014~2016年の3年間の通常国会における提出法案数は、厚労省は27本と、総務省の25本、国交省の24本などよりも多い。その割には、厚労省は、業務量に比して本省定員数が少なく、職員の残業時間は省庁の中で最多であるという。

これを踏まえ、同小委員会は、前掲の「厚生労働省のあり方について」において、2020年以降の我が国社会の構造変化を見据えて、社会保障改革の具体的な方針を検討するにあたって、厚生労働行政の担い手たる厚生労働省のあり方を検討しておく必要がある、と問題提起をした。そして、厚労省が所管する医療や介護などの業務は、地方自治体が担っていることを踏まえて自治体への権限・財源移譲を検討することに加え、厚労省の分割・新省設置や2大臣制を例示して、提言した。

提言「厚生労働省のあり方について」には、より踏み込んだ厚労省の分割案が3つ示されている。案には、現在では内閣府が所管している業務も含まれている。

① 社会保障(年金・医療・介護)、子ども子育て(少子化対策・子育て支援)、国民生活(雇用・再チャレンジ・女性支援)
② 社会保障(医療・介護)、子ども子育て(少子化対策・子育て支援)、国民生活(年金・雇用・再チャレンジ・女性支援)
③ 社会保障(年金・医療・介護)、国民生活(少子化対策・子育て支援・雇用・再チャレンジ・女性支援)
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