楽観的すぎる!日銀「展望レポート」 景気・経済観測(日本)

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筆者は、消費増税の一部は景気悪化に伴う法人税などの直接税の落ち込みによって打ち消されると考えているが、日銀の見方が正しければ、景気悪化は起こらず、消費税の増収分がそのまま財政赤字の削減に直結することになる。しかし、そんなにうまい話があるものだろうか。消費税率を引き上げても景気が悪くならないのであれば、税率を段階的に引き上げる必要はなく、一気に10%、20%まで上げることも可能だろう。そうだとすれば、前回の引き上げから15年間、政治家は一体何を躊躇していたのだろうか。

財政再建に痛みが伴うことも前提としておくべき

前回(1997年度)の消費税率引き上げ後、日本経済は景気後退局面に入ったが、この時はアジア金融危機、国内の金融システム不安が重なったため、景気後退の主因が消費税率引き上げにあったと言いきれないことは確かだ。

また、日銀が指摘しているように、税率引き上げによる影響がマクロモデルなどによる機械的な試算ほど大きくならないことはありうる。それにしても、消費税率を3%引き上げても実質GDPが0.1%しか低下しない(物価上昇に伴う実質所得の減少による部分)という見方はあまりに楽観的すぎないだろうか。

消費税率の引き上げに関する法律はすでに成立しているが、条文では経済状況次第で施行の停止も含めた措置を講じるとされている。衆議院選挙後に発足する新政権は、増税実施の可否について最終的な決断を迫られることになる。

その際に、極めて厳しい財政状況を踏まえ、景気が悪化することは覚悟の上で、増税を実施するという選択肢はありうるだろう。しかし、景気への悪影響はほとんどないから増税が可能であるという判断をしたならば、そこには大きな落とし穴があるような気がしてならない。財政再建には相応の痛みが伴うことを前提とすべきではないだろうか。
 

斎藤 太郎 ニッセイ基礎研究所 経済調査部長

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さいとう たろう / Taro Saito

1992年京都大学教育学部卒、日本生命保険相互会社入社、96年からニッセイ基礎研究所、2019年より現職、専門は日本経済予測。日本経済研究センターが実施している「ESPフォーキャスト調査」では2020年を含め過去8回、予測的中率の高い優秀フォーキャスターに選ばれている。また、特に労働市場の分析には力を入れており、定評がある。

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