ドコモ加藤社長が退任、「敗戦処理」の4年間 後任は「ショルダーフォン兄弟」の弟、吉澤氏

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加藤社長と吉澤新社長は、かなり古くからの付き合いだ。「携帯電話の黎明期、(ドコモ設立前、NTTが)ショルダーフォン(車外兼用型自動車電話で重量3㎏。発売は1985年)を世に出すとき、私が課長、吉澤さんが係長で、二人三脚でいろいろ頑張った」(加藤社長)。

新旧社長は古くからの付き合いがある(撮影:梅谷秀司)

吉澤新社長は、ドコモがNTTから分社した当初からドコモに在籍。法人営業部長、人事部長、経営企画部長、事業改革室長などのキャリアを積んだ人物で「経験豊富で右に出る者がいない」(加藤社長)。

吉澤新社長は「4年間、加藤社長とともに、競争のステージを(端末代金や通信料金の価格競争ではなく)サービスの付加価値の競争に変えていくとか、コストや組織の構造改革に取り組んできた。デバイスの進化、ネットワークの高度化で、さらなる付加価値を打ち出すのが私の使命」と熱く語った。

また、「どんな状況にあっても慌てず騒がず、本質を見失わず、どっしりと構えていきたい。順調なときにもおごらず、冷静に対処する。座右の銘である『失意泰然、得意澹然(しついたいぜん、とくいたんぜん)』を心がけながら事業運営をしていきたい」と締めくくった。

会見での主な一問一答は次ページの通り。

「失意泰然、得意澹然」

――吉澤新社長にどんなかじ取りを期待するか。

加藤 自分の考えで、自信を持って進んでもらいたい。『失意泰然、得意澹然』のモットーで頑張ってもらいたい。

――思い出深い経験は。

吉澤 1台900グラムの重い携帯電話を開発したとき、自分の考えだけですべてできるのではなく、パートナー企業の意見をしっかり聞くことがイノベーションにつながるということを学んだ。経営企画でも法人営業でもその経験が生きた。

――4年前の就任時に「スピード&チャレンジ」と言っていた。

加藤 正直言うと、就任後半年はなかなか決断できなかった場面も多かった。それ以降は覚悟ができたのかな、という反省と自負を持っている。

――加藤時代は点数をつけると何点?

加藤 最初の半年は30点くらいだったと思う。(それ以降の期間は)何とか及第点をいただきたいが、2015年3月期(の大幅減益)の思い出は強烈で、(心に)去来するものはたくさんある。

座右の銘の理由を語った吉澤新社長(撮影:梅谷秀司)

――「失意泰然、得意澹然」を座右の銘にしたきっかけは。

吉澤 15年か20年くらい前に安岡正篤氏(故人)が(明の崔後渠=さいこうきょ)の「六然訓」(りくぜんくん)を座右の銘にしていると知り、なかなかいい言葉だな、と。

仕事の中でつらいことがあったり、修羅場をくぐったりする。たとえば法人営業で顧客のところに行くときは6割くらいが頭を下げに行くのだが、システムに難があったときに、騒いだところでどうしようもない。どっしり構えて冷静に対応策を考えて、次のアクションに移ることが大切だと感じていた。「失意泰然、得意澹然」はつねに頭の中に入れて行動している。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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