ドコモ加藤社長が退任、「敗戦処理」の4年間 後任は「ショルダーフォン兄弟」の弟、吉澤氏
就任当初、業績を大きく押し下げていたのは「月々サポート」。端末代金分にあたる額(機種によって異なる)を2年間、 24カ月にわたって割り引くサービスだ。端末を売り込むために割引を拡大し、2013年3月期は1980億円、2014年3月期も2536億円に及ぶ、巨額のマイナス要因になっていた。
また、iPhone導入はソフトバンク、KDDIに遅れていたため、ユーザーが次々と他社へ流出。さらに、2011年以降は通信障害が頻発し、中には他人宛てのメールが届くなどの深刻な事故も発生、ユーザーの信頼は根本から失われつつあった。
「ツートップ戦略」の失敗
加藤社長は多方面でコスト削減を推進。販売面でも、サムスンとソニーの新スマホを重点的に販売する「ツートップ戦略」の失敗を経て、2013年秋にiPhoneの取り扱いを開始する。ツートップ戦略は「社内のiPhone反対派を説得するために、失敗を承知でやったものだった」(ドコモ幹部)。
そのほか、山田前社長時代に出資したインドの投資案件(通信事業者のタタ社)では巨額の減損を計上し、売却の処理に追われた。同じく、山田前社長時代に始め、赤字を垂れ流したスマホ向け放送局「NOTTV(ノッティービー)」も今年6月の撤退を決め、1000億円近い特別損失を計上している。
他社に先駆けて投入したのは、月額2700円の通話定額「カケホーダイ」プラン(2014年6月導入)。ユーザーに広く支持されたが、最も安いデータ通信プランへの加入が殺到した影響で、約1000億円の減益要因になった。2015年3月期の営業利益は6390億円と、それまで8000億円台だった営業利益の水準は大きく切り下がった。
これには持ち株会社であるNTTの鵜浦博夫社長も大激怒。ドコモに対し、「私も積極的に経営に関与していく。吉澤副社長にコスト削減が進んでいるか直接報告させる」とぶちまけた。結果として、NTTグループ一体の経営が進むきっかけになった。
一方で、スマホ市場の拡大と将来の鈍化を見込み、動画見放題や音楽聴き放題、雑誌読み放題といったコンテンツサービスや、通信事業以外の領域を精力的に拡充し続けた。こうした分野で収益化を進めたことは2016年3月期の大幅増益にもつながっている。加藤社長は13日の会見で「使命と夢に挑戦した4年間だった」と振り返った。
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