三菱自動車の「焼け太り」を非難できない理由 日産の傘下入りは虫がいいが利点も大きい

拡大
縮小

「従来のダイムラーは、まず提携をしてから『何を協力できるか?』というプロセスを踏んでいたが、ルノー日産とのアライアンスはその逆だ」と、過去に三菱やクライスラーとの提携を解消した経験を持つダイムラーの現CEOであるディーター・ツェッチェ氏が、ゴーン氏に向かって言ったことがあるという。

まるで、三菱自動車と日産の提携では「何を協業できるか?」が先にあるとでも言いたげだ。実際、共同での購買、プラットフォーム(車台)の共用などで相乗効果を出すだけではなく、開発や生産拠点なども共有できる。インドネシアに強い三菱自動車の強みを活かすだけではなく、南米、中東、欧州でそれぞれの強みを活かしての協業も視野に入ってくる。機能面でも、三菱自動車は自社に金融サービスを持っていないが、日産はその機能を持っているなど、メリットはたくさんある。

再建シナリオを描きやすくなった

まだ覚書の段階ではあるが、相乗効果を見越したプランを発表できることで、三菱自動車が再建へのシナリオを描きやすくなったのは事実だ。冒頭で触れた通り、世論も、三菱自動車の不祥事から、一転してルノー・日産アライアンスに三菱自動車が加わったことに目が向く。

不祥事を起こした割に、世界有数の規模を誇るアライアンスの一員になるというのは、なんとも甘く虫のいい話ともいえ、「焼け太り」と非難されることになるかと思いきや、そうした声も多くない。

燃費に関する不祥事は、引き続き、厳しく追及すべきだが、一方で、いくら三菱自動車が自動車メーカーとして小さなほうだとはいえ、裾野の広い自動車産業の頂点にある大企業であり、三菱自動車の今後の行方次第では下請けメーカーや販売店などをはじめ、深刻な影響を受けることもありえる。

であれば、シャープが鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されたときのように、「外国企業の手に委ねられるよりは、日本企業の傘下に入ったほうがマシ」という安堵感の方が支配的だ。三菱自動車の不祥事に振り回された側としては、なんだか釈然としないが、日本経済に与える効果という意味では、今回の提携を非難する理由も見当たらない。

川端 由美 モータージャーナリスト
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT