三菱自動車の「焼け太り」を非難できない理由 日産の傘下入りは虫がいいが利点も大きい
穿った見方をすれば、三菱自動車の叩き上げでエンジニア出身の相川哲郎社長が「調査委員会の報告を聞くまでは、当然、社長の責任は果たします」と引責辞任の可能性も否めない発言をしたのに対し、ゴーン氏の信頼が厚い益子氏は続投する可能性が見え隠れする。とはいえ、確実に、日産との提携に向かってマネジメントの舵は切られていく。目標は、年内の終結だ。
「デュー・デリジェンスを終えて、独禁法の問題をクリアした後、年内には案件をクローズできるように進めていきたい」と、益子氏は語る。一方のゴーン氏も、やる気満々だ。
「デュー・デリジェンスの前に具体的な行動を起こすことはないが、いざ、実行に移れる段階になったときに備えて準備はする。例えば、シナジー効果をどう出すか?人的な要因、実行体制といった要因を計画しておく必要がある」と、ゴーン氏は言う。
そもそも今回の話は水面下で進んでいた?
そもそも、このスピード感で記者発表ができた背景には、もともと軽自動車以外でも提携や協業の話が水面下で進んでいたのだろう。そのことについて、ゴーン氏も益子氏も隠そうとはしない。
念のためおさらいしておくと、2011年に両社の共同出資によって軽自動車の企画およびプロジェクトマネジメントに特化する「NMKV」なる合弁会社が設立されている。今回の不祥事の本丸ともいえる部分だ。筆者は、「本来、合弁会社で両社のコンセンサスを得て企画した軽自動車でもあるんだから、日産にも、多少は収束に向けた責任があるのでは?」という印象を持っているが、三菱自動車は終始、日産をかばっている感じがする。資本提携の覚書まで話が進んだあとは、三菱自動車が一手に責任を追って「日産はあくまで被害者」という立場を取る姿勢の目的は明確だ。
会見時にも、ゴーン氏と益子氏は、互いに自己責任を取る姿勢を貫いている。
「資本提携について、国や公的機関からの要請はない。あくまで互いに将来の成長を考えて決断だ。軽自動車の燃費不正問題については、私どもが開発の責任を追っていた。日産に責任があるという認識はなく、その責任の一端として、今回の提携にいたったという認識はない。三菱自動車の国内販売店を日産の販売店に変更することは考えていない。正常な状態に戻して経営できるように、三菱自動車が責任を持って面倒を見る」(益子氏)
「日産はあくまで三菱自動車の株主であり、株主として、当然、サポートはする。が、線引はしている。三菱自動車は三菱自動車、日産は日産として、商品やマーケットにおける責任をそれぞれに持つ。三菱自動車には、説明責任をもってあたってもらう。過去にも、今後も混乱はない」(ゴーン氏)
三菱自動車にとっては、名誉の傷つきを最小限に抑える出口であることに加えて、過去にダイムラーやPSA(プジョーシトロエングループ)との提携に失敗してきた経緯から、まだ資金的に余裕がある段階で、企業風土を越えた提携に長けたルノー日産とアライアンスを選択できたのは不幸中の幸いだ。
現在、ルノー日産アライアンスと提携関係にあるダイムラーにしても、過去には三菱自動車やクライスラーとの提携を失敗してきた経緯がある。が、今年の決算を見ても、アライアンスによる効果を得ている。
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