三菱自動車の「焼け太り」を非難できない理由 日産の傘下入りは虫がいいが利点も大きい

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「燃費の不正問題が発覚した段階で、こういうことになると予想はしていない。当然、状況把握を待った。そして、益子氏との対話の中で、今回の資本提携という結論に至った。これまで、互いに信頼を築いてきた中で、いつかの段階で資本提携を行う可能性は話に上っていたが、今回の事象で加速した感はある。

今後、10〜15年後を予測すると、排ガス問題、マーケットの地理的な拡大、新分野での技術革新の必要性など、多様な課題にどう対処していくかrに頭を悩ませているのは、小規模の自動車メーカーであればどこも同じだろう。今回の資本提携は、そうした過程を経て、自動車業界として成熟していく中における自然なプロセスだ」(ゴーン氏)

益子氏の意見も、見事にコンセンサスが取れている。

「過去に、軽自動車の開発について、単独で行うのは難しいという壁にあたった当時、3つの選択肢があった。ひとつは軽自動車からの撤退、二つ目は他社からOEM(相手先ブランドによる生産)供給をうけること、そして3つめがパートナーを得て軽自動車を開発することだった。

結局、われわれは日産と共同で開発・生産をするという選択を行って、2011年にこの関係がスタートした。これがきっかけになって、ほかの協業の可能性も検討してきた。これまでにも、三菱自動車のタイ工場で日産のピックアップトラックを生産するなどの実績も積んできた。両社の関係を考える中で、資本提携の可能性は自然な流れとして、これまでも話し合いをしてきた。自然な流れの中で提携をする日を迎えたが、”その日”が燃費問題で早まった」(益子氏)

提携でメリットを得るのは誰なのか?

当然、この説明だけでは拒否権を持って、役員を送り込めるほどの株式を所有するほどの大規模な資本提携を選んだ理由としては釈然としない。ハッキリ言って、現段階で三菱自動車は、ルノーと日産がアライアンスを組んだときのような資金面の問題は抱えていない。現状、三菱自動車は約4500億円(2016年3月末)の現預金を持っている一方、有利子負債は300億円程度しかなく、極めてキャッシュリッチでただちに資金繰りに窮する懸念はない。にもかかわらず、三菱自動車は事実上、日産の傘下入りを急いで決めた。

「日産との資本提携を通じて、日産から人的および技術的支援を受けて、開発風土の意識的改革ができる。今回の合意によって、協業の幅が広がる。EV(電気自動車)や自動運転といった次世代の開発についても、提携を深める。共同購入プログラムによるコスト低減も重要だ。

また、アセアンでの協業によって、さらに多くのビジネスチャンスを生む。ルノーと日産は互いを尊重し、独ダイムラーや露アフトワズ(Avtovaz)などともアライアンスで成功した経験を持っている点も心強い。三菱自動車として、信頼を取り戻すのは容易ではない。しかし、今回、日産とのアライアンスを通じて、困難な道を歩み始める力を養える」(益子氏)

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